「主演女優」にふさわしい落ち着きも備える
突然の交通事故で夢を奪われ、さらに耳の病気で聴覚を喪失するかもしれない主人公。本人の力ではいかんともしがたい要素を配置した脚本です。しかも、耳の病気を患う花枝の相手がミュージシャンという安直さ。病気や手術という要素をご都合主義的に使いすぎると、視聴者としてはなかなか感情移入が難しい。
一方、花枝の幼なじみで彼女に思いを寄せている夏川慎吾役・菊池風磨さん、その慎吾を好きな萩原凛役・藤原さくらさんという2人のキャラクターが似通っている。軽口で毒舌、容姿は今風でチャラそう、しかし内心はナイーブで純粋…その2人がワイワイ重なると、どうにもクドい。ということでドラマ世界としては大人の鑑賞に耐えがたいのですが、しかしだからこそ、主役「清原果耶」という女優の可能性を発見できたのかもしれません。
たとえ虎のパンツをはかされ赤いカツラで鬼のコスプレをしても、やっぱり清原さん。たとえ作業着姿でも、たとえモップをかけていても、たとえ自ら男性にキスをしても。どんなシーンに置かれても、清原さんらしさというものが感じとれる。その意味で凄い。大きな声を出したり大げさなアクションは苦手だという清原さん。やや抑制的な演技を見せますが、それも彼女らしさを形作っているのでしょう。声は小さめでもちゃんと相手の言葉や反応し、ビビッドにリアクション。表情も細やかに変化していく。
弱冠二十歳ですが、「主演女優」という看板を背負う、落ち着きと清楚感とをたしかに持ち合わせていそうです。シリアスドラマからラブコメまで幅広いジャンルに柔軟に適応し、しかも常に清原さんにしかないテイスト感が出せるとすれば。今後の清原さんに女優の王道をいく可能性を感じたのは私だけでしょうか?