国際情報

ワリエワ選手の発言とウクライナ侵攻が映し出す“ロシア的”類似

(写真/アフロ)

批判を浴びながらも北京五輪に出場したカミラ・ワリエワ選手(写真/アフロ)

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、フィギュアスケートのカミラ・ワリエワ選手とウクライナ侵攻に見る“強いロシア”について。

 * * *
 ドーピング違反が発覚しながらも北京五輪への出場が認められ、フィギュアスケート女子シングルで4位に終わったROC(ロシア・オリンピック委員会)のカミラ・ワリエワ選手。彼女が騒動後、初めて更新した自身のSNSのコメントが、あまりにも“ロシア的”で驚いた。コーチ陣に感謝の意を表しているのだが、その内容がなんだか一昔前のソ連をイメージさせるものだったからだ。

「私のコーチは、彼らの分野の絶対的な指導の達人です。そしてトレーニングするだけでなく、自分自身に打ち勝つことを教えてくれます。これはスポーツだけでなく人生にも役立ちます。あなた方が私のそばにいると私は守られていると感じ、どんな試練も乗り越えることができます。私が強くなるのを手伝ってくれてありがとう」

 この国では指導者は絶対的な存在であり、選手はいつどんな時でも強くあらねばならならいのだろうか。

 女子シングルフリーのジャンプでは、まさかの転倒を繰り返したワリエワ選手。ドーピング問題でバッシングを受け続けた中での試合でも、彼女を指導してきたコーチ、エテリ・トゥトベリーゼ氏は、戦うこと、強くあることを求めた。絶望的な表情を見せながらリンクを後にしたワリエワ選手に対し、「なぜ3回転アクセルの(失敗の)後にあきらめたの?なぜ戦わなかったの?説明しなさい」と叱責したのだ。

 この言葉の裏を返せば、彼女たちの五輪は競い合うものではなく戦うもの。ロシアでは決してあきらめてはいけないし、戦いを放棄してはいけないということだろう。

 勝つためなら15才の少女にどんな言葉を浴びせても良いのか。誰もがそう思っただろう。ワリエワ選手から検出された薬物反応の真相が明らかになっていないにも関わらず、ロシアでは帰国した選手たちに、“自前の表彰式”とも言えるセレモニーが行われ、ワリエワ選手にも同じく特別賞が贈られたという。その様子は、そこまでのプロセスよりも終わりよければ全てよし、過程よりも結果を重視するという「結果バイアス」がロシアにあることを印象付けたようなものだった。

 ワリエワ選手は、五輪前のプーチン大統領とのオンライン壮行会で、「できるだけ多くのメダルをロシアのために勝ちとるよう努力します」と述べている。彼女たちが戦う第一義は、ロシアのためなのだろうか。

関連記事

トピックス

第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《左耳に2つのピアスが》地元メディアが「真美子さん」のディープフェイク映像を公開、大谷は「妻の露出に気を使う」スタンス…関係者は「驚きました」
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(27)と伊藤凛さん(26)は、ものの数分間のうちに刺殺されたとされている(飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
「ギャー!!と悲鳴が…」「血のついた黒い服の切れ端がたくさん…」常連客の山下市郎容疑者が“ククリナイフ”で深夜のバーを襲撃《浜松市ガールズバー店員刺殺》
NEWSポストセブン
和久井学被告と、当時25歳だった元キャバクラ店経営者の女性・Aさん
【新宿タワマン殺人・初公判】「オフ会でBBQ、2人でお台場デートにも…」和久井学被告の弁護人が主張した25歳被害女性の「振る舞い」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(Instagramより)
《愛するネコは無事発見》遠野なぎこが明かしていた「冷房嫌い」 夏でもヒートテックで「眠っている間に脱水症状」も 【遺体の身元確認中】
NEWSポストセブン
大谷翔平がこだわる回転効率とは何か(時事通信フォト)
《メジャー自己最速164キロ記録》大谷翔平が重視する“回転効率”とは何か? 今永昇太や佐々木朗希とも違う“打ちにくい球”の正体 肩やヒジへの負担を懸念する声も
週刊ポスト
『凡夫 寺島知裕。「BUBKA」を作った男』(清談社Publico)を執筆した作家・樋口毅宏氏
「元部下として本にした。それ自体が罪滅ぼしなんです」…雑誌『BUBKA』を生み出した男の「モラハラ・セクハラ」まみれの“負の爪痕”
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
「佳子さまは大学院で学位取得」とブラジル大手通信社が“学歴デマ報道”  宮内庁は「全報道への対応は困難。訂正は求めていません」と回答
NEWSポストセブン
米田
「元祖二刀流」の米田哲也氏が大谷翔平の打撃を「乗っているよな」と評す 缶チューハイ万引き逮捕後初告白で「巨人に移籍していれば投手本塁打数は歴代1位だった」と語る
NEWSポストセブン
花田優一が語った福田典子アナへの“熱い愛”
《福田典子アナへの“熱い愛”を直撃》花田優一が語った新恋人との生活と再婚の可能性「お互いのリズムで足並みを揃えながら、寄り添って進んでいこうと思います」
週刊ポスト
生成AIを用いた佳子さまの動画が拡散されている(時事通信フォト)
「佳子さまの水着姿」「佳子さまダンス」…拡散する生成AI“ディープフェイク”に宮内庁は「必要に応じて警察庁を始めとする関係省庁等と対応を行う」
NEWSポストセブン
まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン