国内

連合赤軍元兵士の告白 総括された婚約者への「好きではない」の言葉

1972年に起きた「あさま山荘事件」(時事通信フォト)

1972年に起きた「あさま山荘事件」、元メンバーに取材(時事通信フォト)

 山荘に激突する巨大な鉄球、犯人グループによる銃撃の応戦──日本中がテレビにかじり付いた「あさま山荘事件」から50年が経った。あの時、立てこもった犯人たちは何を求め、誰と戦っていたのか。元連合赤軍中枢メンバーの植垣康博氏(73才)が、凄惨な“粛清”の現場について語る(文中敬称略)。【全4回の第2回。第1回を読む】

 * * *
 赤軍派は1969年11月に山梨県の大菩薩峠でメンバー53人が軍事訓練中に凶器準備集合罪で逮捕されて大打撃を受けた。大型ダンプカーに分乗して首相官邸を襲撃する計画だったという。警察の集中的な取り締まりの対象となり、路上で唾を吐いた、赤信号で横断歩道を渡ったなどの微罪で逮捕され、「赤軍罪」との言葉も生まれた。

 そうした状況のなか赤軍派指導者の森恒夫は、同じく武装闘争路線を取り警察に追い込まれていた日本共産党革命左派神奈川県委員会(革命左派)と軍事組織を合同して難局を乗り切ろうとする。1971年12月、両派は南アルプスで合同軍事訓練を実施。連合赤軍の結成へとつながった。

 群馬県の榛名湖は標高1000mを超える高さにある。2月中旬の朝早くに訪れてみると、気温は氷点下を優に下回っていた。湖面が氷結するほどの寒さだ。この榛名湖から近い榛名山中に設けた新たなベースに集結していた連合赤軍に植垣が合流したのは、1972年の年明け早々。榛名湖に到着すると、出迎えのメンバーから驚くべき事実を聞かされる。

「榛名ベースでメンバーのうち2人が死んで近くに埋められているというじゃないか。『え、本当に死なせたのか』と目眩を覚えたが、動揺を表すまいとそれを口にすることもできなかった」(植垣、以下「」内同じ)

 すでに南アルプスでの合同軍事訓練の時にその兆しはあった。参加した女性メンバーが髪の毛を伸ばし、指輪をしていたことが咎められ、「総括」を要求されたのである。総括とは、それまでの活動を振り返り反省や改善策を見出すことを言う。

 総括要求は榛名ベースで凄惨な「同志殺し」へとエスカレートした。「他のメンバーとキスをした」「任務中に銭湯に行った」。些細な理由で次々と総括が求められ、それを支援するためと称して他のメンバーに入れ替わりで殴られ、縛られ、真冬の山中に放置された。誰に総括を要求するか、それを決めるのは森とナンバー2の永田洋子。残るメンバーはその決定に従うだけである。

「森は高校時代に剣道の試合で気絶して目覚めた時に別の人格に生まれ変わったような気がしたそうなんだよ。だから、殴って気絶させると、真の革命戦士に生まれ変われると言うんだ」

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン