法廷での県内警察署と金券に関する発言が話題に(写真はイメージ)
もちろん、通常はさまざまな葬儀社に分散しなければいけないが、加藤被告は特定の葬儀社に依頼する見返りとして報酬を得ていたわけだ。葬儀社側としては遺体の搬送だけではなく、その後の葬儀全般の依頼を遺族から見込める可能性がある。小川氏はこう続ける。
「変死体は夜間に上がることが多く、当直中に通報があると朝まで現場検証や調書などの作業に追われます。さらに解剖が行われる場合にはそれに立ち会うため、すべてを終えて捜査員達が署に帰ってくるのは夕方になることもある。捜査員が帰ってくると、捜査に当たった者と署に残った当直員たちで警察署の食堂などで献杯をする慣習があり、その時に遺体の搬送を依頼した葬儀社から“お清め”の意味でビール券が4(死)枚配られる習わしもあった。加藤被告が公判中にビール券に言及したのは、そうしたところが念頭にあってのことでしょう」
今回の事件の再発防止策として神奈川県警は、全署に遺体搬送用の車両や冷蔵保管庫を配備するなど、“葬儀社に頼らない態勢”をつくっていくと県議会の常任委員会で説明した。配備には数年かかるとされ、2022年度の一般会計当初予算案には約5000万円が計上されたという。不正の温床となりかねない慣習は、早く見直される必要があるだろう。