電動キックボードの横でポーズを取るウサイン・ボルト氏。ボルト氏はアメリカでベンチャー企業ボルト・モビリティを設立(時事通信フォト)

電動キックボードの横でポーズを取るウサイン・ボルト氏。ボルト氏はアメリカでベンチャー企業ボルト・モビリティを設立(時事通信フォト)

電動キックボードは自転車保険になるのでしょうか?

 個人で運送事業を営むバイク乗りの男性は納得しないと話す。3月4日に閣議決定された電動キックボードの改正案は、新たに「特定小型原付自転車」という車両区分を設け、「最高速度は時速20km以下」「運転免許証不要」「16歳以上」「ヘルメット着用は努力義務」「時速6km以下に制御していれば歩道走行可」「交通反則通告制度の対象」というルールを予定している。

「いろいろ突っ込みどころだらけですけど、要は時速20kmのバイクなら無免ノーヘルでいいってことですよね、おかしくないですか?」

 おかしい。筆者も思う。まして閣議決定の骨格には「任意保険」どころか「自賠責保険」すら見当たらない。何度も書くが、任意保険は本当に大切で、絶対入らなければならないと思う。しかし自動車すら任意保険加入率は70%台、任意保険も入らずに自動車を運転するドライバーが30%近くもいる(考えただけで恐ろしい)のが現実だ。普通二輪に至っては先の原付の30%台に負けずの対人・対物とも40%台、人間を轢いてしまったら、とか高級外車や商店に突っ込んだら、とか考えないのだろうか。はっきり言う。正気の沙汰ではない。そして今回の「特定小型原付自転車」なる無免許ノーヘル電動キックボードは自賠責保険すら現状では免除されている。というか制度そのものがない。

「自転車保険になるんでしょうかね、あれこそ入ってないのでは」

 自転車保険は調査によってまちまちだが50%台から60%前後といったところ。都府県によっては義務化され、昔に比べれば増えていることは確かだ。それでもこの程度、まして自賠責もない、と考えればこれも正気の沙汰ではない。言葉が強く不愉快に思う人もいるかもしれないが、それほど保険に入らず公道を走行するというのは危険かつ迷惑な行為なのだ。

「それに免許いらないのに青切符って効果あるんですかね。極端な話、罰金払えば乗ってられるわけで。あと16歳ってわからないでしょう。15歳とかが乗って、それも罰金払えばいいんですかね、やっぱり突っ込みどころだらけで急ぎすぎですよ」

 まったくその通りでまさしく「急ぎすぎ」に同感だが、筆者としてはヘルメットが努力義務というのも納得いかない。「勝手に死ねばいい」は簡単だが、先のトラック運転手や営業マンが言うように「引っ掛けたら」「ぶつかったら」当然ながら後遺障害どころか最悪死んでしまう。交通事故総合分析センターによればヘルメット未着用の頭部負傷発生率は2倍、死亡率は3倍にも跳ね上がる。自転車すら警察庁によればヘルメット未着用では死亡率が2.5倍にもなる。時速20kmでノーヘルの車両が公道を走る。明確な通行禁止でもなければ国道や大型橋梁を通行しても構わない。あやふやな存在のまま、こんな車両が日本中にあふれかえる可能性がある。

「万が一そんなのと事故起こしても、やっぱりこっちのせいにもなるんでしょうね。理不尽ですよ」

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