ライフ

藤井聡太竜王 小学3年生で「号泣しながら勝利」のものすごい根性秘話

高見泰地四段(同、現・七段)から賞状を受け取る藤井少年

高見泰地四段(同、現・七段)から賞状を受け取る少年時代の藤井竜王

 プロ棋士デビューした2017年度から4年連続で「年間勝率ランキング1位」だった藤井聡太竜王(19)が、2021年度は2位に終わった。勝率8割1分8厘(45勝10敗)の成績で、藤井竜王を6厘差で抑えたのは同い年の伊藤匠五段だ(19)。プロデビューは2020年10月で、2021年度には新人王を獲得し、C級2組を1期で通過した期待の星である。

 この伊藤五段、10年前に藤井竜王を“泣かせた”ことがあるという──。

 9歳だった2人が対戦したのは、2012年1月に小学館主催で行なわれた「第9回小学館学年誌杯争奪全国小学生将棋大会」の小学3年生の部。会場は東京・神保町の小学館本社の裏にある一ツ橋センタービルの12階だった。

 見学に訪れた勝又清和七段(53)はこの対局を鮮明に記憶している。

「高学年の対局を見ていたら、いきなり“うわーん”って声がした。なんだろうと思ったら、準決勝で伊藤くんに負けた藤井くんが、声を上げて泣いていた。負けて泣く子は珍しくないですが、あの大会では藤井くんだけで目立っていました」

 よほど悔しかったのか、藤井少年はいつまでも泣き止まなかった。大会運営にあたっていた小学館OBの中原康氏が振り返る。

「藤井くんが泣き止まないので、伊藤くんが決勝戦に移れない。時間も押していたし、スタッフがなだめるのに苦労していました。上の学年の子に負けることはあっても、まさか同学年に負けるとは思っていなかったのでしょう。藤井くんは関西・中京エリアではダントツの存在でしたから」

 泣きっぷりだけでなく、その後の対局内容でも、周囲を唸らせた。

「泣き止まないまま3位決定戦に臨み、涙をぬぐいながら指して勝ったんです。私は20年以上、子供たちに将棋を教えてきましたが、泣きながら勝ったのは藤井くんしかいません。将棋は心が乱れると本来は勝てない。ものすごい根性だなぁと感心しました」(勝又七段)

 それから10年。遅れてプロになった伊藤五段に、「年間勝率」で再び後塵を拝した藤井竜王の胸中やいかに──。

「対戦相手が違うのでお互いに気にしていないでしょう。藤井竜王は5つのタイトル戦を戦っての勝率8割ですから、本当に化け物です」(勝又七段)

 まだ公式戦での対局がない2人。プロとしての勝負も早く見てみたい。

※週刊ポスト2022年4月22日号

関連記事

トピックス

二人とも帽子をかぶっていた
《祝・第一子妊娠発表》小山慶一郎(40)と宇野実彩子(38)が見せていた“ハワイ帰りの幸せなやりとり”「いろいろ行ったよね!」
NEWSポストセブン
10月1日、ススキノ事件の第4回公判が行われた
《延長リクエストは断った》田村瑠奈被告の“ホテルで夜遊び”を車で待つ父親の心情「周りから奇異な目で見られても…」【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
ジャンボ軍団がセレクションに登場。左から金子柱憲、飯合肇、尾崎直道、尾崎健夫(撮影・太田真三)
10年ぶりに勢揃いのジャンボ軍団が語り合った「日本の男子ツアーが盛り上がらない理由」 女子はスターが次々と出てくるのに“ジャンボ尾崎の跡取り”が出ない苦悩
NEWSポストセブン
公判で明らかになってきた田村一家の“地獄の家”の全貌とは
《どうしてここから出られないの…》田村瑠奈被告は現在も「首を拾っただけなのに」と弁護人に伝達、裁判で明かされた“家庭内暴力”「ガムテープが飛んできた」「運転中に首絞め」【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
慶應義塾アメフト部(インスタグラムより)
《またも未成年飲酒発覚》慶大アメフト部、声明発表前に行われた“緊急ミーティング”の概要「個人の問題」「発表するつもりはない」方針から一転
NEWSポストセブン
1月23日、トランプ大統領はケネディ暗殺に関連する非公開資料を機密解除する大統領令に署名した(写真=AP/AFLO)
【本当に狙ったのは誰か】「ジョン・F・ケネディ大統領暗殺事件」の記録が完全公開へ 落合信彦氏の著書『二〇三九年の真実』で指摘された謎や不審点
週刊ポスト
性的パーティーを主催していたと見られるコムズ被告(Getty Images)
《裸でビリヤード台の上に乗せられ、両腕を後ろで縛られ…》“ディディ事件”の被害女性が勇気の告発、おぞましい暴行の一部始終「あまりの激しさにテーブルの上で吐き出して…」
NEWSポストセブン
引退後の生活を語っていた中居正広
【全文公開】中居正広、15年支えた恋人との“引退後の生活” 地元藤沢では「中居が湘南エリアのマンションの一室を購入した」との話も浮上
女性セブン
親方としてのキャリアをスタートさせた照ノ富士(写真・時事通信フォト)
【25億円プロジェクト】照ノ富士親方の伊勢ヶ濱部屋継承 相撲部屋建設予定地の地主が明かした「6階建てお洒落建物」構想
NEWSポストセブン
水原被告がついた「取り返しのつかない嘘」とは
水原一平被告がついた「取り返しのつかない嘘」に検察官が激怒 嘘の影響で“不名誉な大谷翔平コラ画像”が20ドルで販売
NEWSポストセブン
折田氏が捜査に対し十分な対応をしなかったため、県警と神戸地検は”強制捜査”に踏み切った
《「merchu」に強制捜査》注目される斎藤元彦知事との“大きな乖離”と、折田楓社長(33) の“SNS運用プロ” の実績 5年連続コンペ勝ち抜き、約1305万円で単独落札も
NEWSポストセブン
『東京2025世界陸上』のスペシャルアンバサダーを務める織田裕二
「くすぶって終わりたくない…」 織田裕二がバラエティ出演を辞さなくなった切実な背景《『世界陸上』に緊急復帰の理由》
NEWSポストセブン