「ぼくはボロボロになってもいい」
「子供が出ているテレビ番組を見ているとき、私が『かわいいなぁ、健気だね』とつぶやいた。すると彼が『子供がいないのがかわいそうだ。ごめんな』と号泣したんです。この一件で、お互いが話題に出さなくとも、子供についてずっと考えていたことを再確認しました」
綾菜さんは今年に入り、知人の紹介で著名な産婦人科を訪れたという。医師に妊娠について相談したところ、夫が高齢で既往歴がある場合、男性の体への負担は小さくないと説明された。
「夫に話すと『ぼくはボロボロになってもいいからやろう』と言ってくれました。すぐにできる保証はなく、むしろ長期戦になるだろうし、そうなるとちーたんの体への負担はさらに……命の危険を顧みずに私のために『やろう』と言ってくれた彼の決意を聞いて私の気持ちが固まりました。
治療をして、彼にもしものことがあったらと考えると、『子供』よりも『夫の命』を大切にしたいと思ったんです。今回の本に子供のことを書くべきだ、と後押ししてくれたのも夫でした」
年の差があるふたりだからこそ、終活について話題にすることもあるという。加藤は綾菜さんに「理想の葬式プラン」を託しているという。
「毛が1本だけ生えたハゲヅラをつけて、“加トちゃんペ”のポーズで棺桶に入れてほしいそうです。最後までコメディアンでいたいから、お祭りのように華やかにしてくれと言われています。同世代の夫婦と比べると一緒にいられる時間は短いかもしれません。それでも、悲しい気持ちになることはありません。ちーたんが“おれの人生最高だったわ”って言ってくれるように一日一日を楽しんで過ごすだけです」
ふたりで生きていく。覚悟を決めた彼女の晴れやかな表情が印象的だった。
撮影/平野哲郎
※女性セブン2022年4月21日号