破壊された町で暮らす住民たち(写真/水谷氏撮影)
池上:取材者の立ち位置で言えば、1991年の湾岸戦争や2003年のイラク戦争では欧米メディアは主に攻撃する側から取材していました。ただイラク戦争の際はアラブ世界のアルジャジーラが唯一、攻撃される側から見た戦争を報じました。今回の戦争のように欧米メディアがすべて被害者側の立場にいるのは、戦争報道では極めてめずらしい。
水谷:ああ、なるほど。
池上:今回、ロシア軍に従軍しているのは、ロシア国営放送などロシアの御用メディアと中国人記者だけです。
水谷:確かに明確に分かれています。逆にウクライナで中国人記者はほとんど見かけません。
(後編につづく)
【プロフィール】
池上彰(いけがみ・あきら)/1950年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、1973年NHK入局。1994年から「週刊子どもニュース」のお父さん役を11年務め、2005年よりフリージャーナリストとして活動。2016年より名城大学教授、東京工業大学特命教授。著書に『池上彰の世界の見方 ロシア』など。
水谷竹秀(みずたに・たけひで)/1975年三重県生まれ。上智大学外国語学部卒業。新聞記者やカメラマンを経てフリーに。2004~2017年にフィリピンを拠点に活動し、現在は東京。2011年『日本を捨てた男たち』で開高健ノンフィクション賞を受賞。ほかに『だから、居場所が欲しかった。』『脱出老人』など。
※週刊ポスト2022年5月6・13日号