4月18日、スイスのカシス大統領兼外相と会談した林芳正外相(時事通信フォト)
2つめは北朝鮮との国交正常化。虚勢を張って弾道ミサイルをアメリカまで撃ち込む技術を持ったと主張しているが、実際にはまだ難しく、日本だけが脅威にさらされている状態だ。喉から手が出るほど日本の戦後賠償が欲しい北朝鮮は本音では日本との国交正常化を望んでいるが、アメリカも韓国も反対する。私が議員だった頃、外務官僚を目の前にそれを求めたら、めちゃくちゃに震え、反対していた。
林芳正は非常に優秀だから、何をやったらどれだけのダメージになるかを計算できる男だ。だが、それが邪魔になる。
政治家は勇気、決断、実行力が不可欠。その資質が最も問われる自主外交に林芳正が一歩踏み込めば、後世に残る外務大臣、総理大臣になれる。その覚悟があるか、だ。
【プロフィール】
石井一(いしい・はじめ)/1934年生まれ。国土庁長官、自治大臣、民主党副代表などを歴任。
※週刊ポスト2022年5月6・13日号