生涯がん罹患リスク
一方、『ドキュメント がん治療選択』(ダイヤモンド社刊)の著者・金田信一郎氏(会員誌『Voice of Souls』代表)は、ステージ3の食道がんの治療に際し、「家族には相談せず、放射線治療を決めた」という。
「最初に入院した東大病院では、再三、外科手術を勧められました。でも、『もの書きの仕事を続けられなければ生きている意味はない』と思っている私には、食道を摘出することで外食がしにくくなって、思うように取材や出張ができなくなることが許容できなかった。
だから仕事を続けられる治療法はないかと勉強し、医療関係者に聞いて自分で放射線治療を選びました。決断にあたっては家族に相談せず、自分で決めたことを説明しただけです」
その意思を貫けたのも、金田氏が東大病院から国立がん研究センター東病院にセカンドオピニオンで転院したのが大きいという。
「今の時代は親の介護を頑張っている人もいれば、子育てを優先している人もいて、いろんな考え方があります。介護を続けるために放射線を選ぶ人がいれば、同じ目的のために手術による短期間での治療を望む人もいる。そこに正解はなく、どんな治療を選択するかはその人がどうしたいかなんです」(金田氏)
「治るか治らないか」だけが、治療法を決める基準ではなくなりつつある。
※週刊ポスト2022年5月6・13日号