神真都Qの連帯を呼びかける投稿がネット上で出回り始めたのが昨年の秋頃(撮影/藤倉善郎)
トランプが称賛?
この神真都Qはただの反ワクチン集団というだけにとどまらず、自らの正統性をアメリカ発祥の陰謀論集団である「Qアノン」とのつながりに求めるのを知って私は驚き、興味を抱いた。
同団体のホームページを見ると、Qアノンの「正式な日本支部」であり、そのQアノンが信奉するドナルド・トランプ前大統領への賛辞も書き込まれていた。さらにネット上を調べると、彼らが「私たちはトランプ大統領から承認された世界で17億人いるQです!」と主張していることを知った。さらに、メンバーのフェイスブックには、トランプが神真都Qを「大和魂を持った恐れを知らない戦士だ」と褒め称えている、というトランプが書いたとされる英文メッセージのスクリーンショットが掲載されている。
私は2020年のアメリカ大統領選挙を1年にわたり現地取材し、その過程で数えきれないほどのウソや陰謀論に出会った。Qアノンの信者にも話を聞いている。しかし、そうした経験を踏まえても、神真都Qはあまりにも奇天烈に映った。
アメリカにおけるQアノンとは、民主党政権などの政府高官に悪魔崇拝者や小児性愛者がおり、人身売買を行なっている闇の勢力「ディープ・ステイト」があると認識し、それらに立ち向かって闘うのがドナルド・トランプであると信じる陰謀論集団を指す。「Q」という謎の人物が発信するメッセージに、匿名(アノニマス)の信者たちが答えを探して書き込むことで“真実”に近づくという仕組みになっている。
神真都Qが主張することに関する事実関係を簡単に確認しておこう。
トランプはこれまでQアノンを承認したことはない。Qアノンとはネット上の勝手連的な集まりにすぎない。トランプの過去のツイッターの投稿を検索しても、Qアノンに言及したことがないのが分かる。そのトランプが神真都Qを承認することはあり得ない。さらに、Qアノンには本部さえ存在しないのに、神真都Qがその日本支部であることはあり得ない。
さらに、反ワクチンの首魁として仰ぐトランプ自身は、新型コロナのワクチンを3回接種しており、そのことを公に認めた時、支持者からブーイングを浴びている。
アメリカ発の陰謀論集団であるQアノンは、どうして日本では過激な反ワクチン集団へと変貌していったのか。
(後編につづく)
【プロフィール】
横田増生(よこた・ますお)/ジャーナリスト。1965年福岡県生まれ。アイオワ大学ジャーナリズムスクールで修士号。物流業界紙の記者、編集長を務め、1999年フリーに。2020年、『潜入ルポ amazon帝国』(小学館刊)で新潮ドキュメント賞受賞。『「トランプ信者」潜入一年』(小学館刊)を刊行。
※週刊ポスト2022年5月20日号