コーヒーサーバーの抽出口にも、BPAがコーティングされている(Getty Images)
ペットボトルの水より缶コーヒーが安全
プラスチックゴミが劣化したものや食器用スポンジの繊維くずなど、直径5mm以下の微細なプラスチックのことを「マイクロプラスチック」という。
「環境問題として語られることが多い一方で、人体にも大きな害がある。消化器から体内に取り込むと、腸の粘膜バリアを通り抜けて血流に乗り、細胞に蓄積し、心臓や血液にダメージを与えます。すでに、ヒトの胎盤から検出された例もあります」(高田さん)
マイクロプラスチックは、海や空気中に漂うものも含めると50兆個以上も存在するとされ、もはや避けることは難しい。高田さんによれば、ペットボトルで水を飲むと、水道水の20倍のマイクロプラスチックを摂取することになるという。地球環境に悪いものはやはり、人間の健康も脅かすのだ。
これほどの危険があっても、いまの日本でプラスチック製品を絶って生活することは不可能に近い。だが、BPAなどの有害物質の性質を利用して、溶け出すのを抑えることはできる。
「当然ながら、プラスチックでパックされたものを買わないのが最も有効ですが、買ってしまったら、せめて容器に入ったまま電子レンジで加熱しないこと。化学物質の多くが高温で溶け出す性質のため、温める際はガラスや陶器の容器に移し替えるようにすべきです」(ワーグナーさん)
ペットボトルの場合は、古い容器に注意すること。何度も洗って再利用するとプラスチックが劣化し、かく乱物質が溶け出しやすくなる。
「ペットボトルの飲み物を凍らせるのも、かく乱物質が滲出しやすくなります。飲み物を買うなら、ペットボトルよりも缶がいい。食べ物の缶詰とは異なり、缶コーヒーなどは内部にコーティングがされていないので、かく乱物質の危険は少ないのです」(郡司さん)
一方、缶詰の中では特に、トマトやさばのみそ煮などは、BPAが溶け出しやすい。酸性のもの、脂っこいものに滲出しやすいため、これらは加工されていないものを買うべきだ。ワーグナーさんによれば、プラスチックに含まれる有害な化合物の中には、意図的に添加したわけではないものも多いという。
「残留物なども含めると、プラスチックの化合物は1万種類以上です。まだ研究されていないものも多く、その危険性はいまだに過小評価されています」(ワーグナーさん)
近年ようやく、プラスチック製品の人体への危険性に関する研究が本格的になってきた。これまで当たり前に使ってきたものを見直す機会が来たと高田さんは語る。
「プラスチックの有害物質は、長い年月をかけて少しずつ体にたまるので、取り込んですぐに健康を害するものではありません。危険なプラスチック製品をできるだけ使わず、口にしないようにいまから意識するだけでも、充分に健康を取り戻すことができます」(高田さん)
賀来さんは、「正しい食事を摂り、腸内環境を整え、そのうえで身近な有害物質を避けることが、“解毒”のための第一歩」と語る。
できることから始めたい。
※女性セブン2022年5月26日号