秋篠宮の胸中とは(時事通信フォト)
江森氏は小学生時のこんな話を直接、秋篠宮から聞いたことがある。
「冬に私がペットにしていたテンジクネズミを泳ぐかと思って、池で泳がせました。そうしたら心臓マヒを起こして死んでしまいました。ちょうど、その時に、父がそこを通りかかりました。『何をしているんだ』と、父が尋ねました。『テンジクネズミを泳がせたら死んじゃった』と、私が答えました。そうしたら次の瞬間、私が父に池の中に投げ込まれました」
研究者としての顔を持つ秋篠宮は現在、日本動物園水族館協会と日本植物園協会の総裁を務めている。「こうした分野の原体験に、父親が登場することは珍しくありません」と江森氏は語る。
「『あれがソウギョだよ』とか『今、池の水面に顔を見せたのがハクレンだ』というように教えられました」
幼き秋篠宮は父親とともに東宮御所内の池を訪れ、そんな教えを受けたそうだ。秋篠宮にとって父親とは、生物の先生でもあったのだ。
「父からもらって大切にしている本が二冊あります。それは、『原色 前世紀の生物』と『繪による自然科學叢書淡水魚』の二冊です。前者はもらった時、私が幼稚園児だったこともあるのでしょう。恐竜の絵をクレヨンでなぞった跡が残っています」
なお、『原色 前世紀の生物』は、現在は悠仁親王の手元にあるそうだ。「父から子へ、そして孫へと一冊の本が読み継がれていく。素敵な話だと思うと同時に皇室という伝統も、自然な形で受け継がれていくとよいと思いました」(江森氏)
(第3回につづく)
※週刊ポスト2022年5月20日号