花田町長も男を非難している(時事通信フォト)
「新人職員」と「フロッピーディスク」
そもそも誤送金を防ぐ手立てはなかったのだろうか。給付金の振込手続きは、経験の浅い新人職員が行った。
「それまで担当していたベテランの女性が異動になり、業務が引き継がれました。振込先のデータを銀行に渡せば、依頼は完了。ですが、提出する必要のない振込依頼書も銀行に送ってしまった。この依頼書に記載ミスがあったようで、誤送金が行われました。ただ、不慣れな職員だとわかっていたのに、チェック体制がずさんだったことは否めない」(町役場関係者)
データのやりとりには、銀行側の意向でフロッピーディスクが用いられていたという。
「いまどきフロッピーというのは時代遅れも甚だしい。そもそも、フロッピーディスクを読み取る機械自体が珍しくなっている。大方、担当の職員くらいしかデータのチェックを行っていなかったんでしょう。それに、こんな田舎の町役場が、個人の口座に4000万円以上振り込むなんてことはそうそうあるもんじゃない。にもかかわらず、銀行の担当者も疑問に思わなかった。役場と銀行双方に落ち度があったようにも思います」(別の町役場関係者)
当初田口容疑者は返還に応じようとしていた。午前中に自宅を訪れた職員から事情を説明され、田口容疑者名義の口座がある銀行に足を運んでの組戻しを依頼されると、田口容疑者は不可解な行動に出る。
「風呂に入るから1時間くれ」
その言葉を受けた職員は、のんびり1時間、田口容疑者に考える猶予を与えた。さらに、組戻しを行う宇部市内にある銀行までは車で2時間の距離だ。到着前には「銀行へ行くならはんこが必要だ」と言い出した田口容疑者が100円ショップに立ち寄り、認め印を購入した。その間、田口容疑者の手にスマホが握られていたことは想像に難くない。そして、田口容疑者は銀行に入る直前で唐突に立ち止まり「今日は手続きしない」と言ったのだ。
「はじめに返還の意思を確認した段階で、職員が安心しきったのかもしれません。ですが『振込』『間違い』『返金』といったキーワードで検索するだけでも、今回の騒動以前に書かれたネット上の記事がヒットします。そこには、罪に問えたとしても、お金を取り戻せない可能性があることが解説されている。
翻意した田口容疑者は、後日、役場の職員に“お金は動かしたため元には戻せない。罪は償う”と説明しましたが、それとも合致する。組戻しの手続きが完了するまで、職員は目を光らせ続けなければならなかった」(前出・社会部記者)
※女性セブン2022年6月2日号
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