漁業権の侵害注意の看板。千葉県南房総市(イメージ、時事通信フォト)
令和2年12月1日に、改正漁業法が施行され、罰則が厳しくなった。密漁は漁業権の侵害にあたり、100万円以下の罰金になった。漁業権を持たない者が潜水機や底引き網などを用いて無許可で操業し、起訴された場合は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金となる。
「普通に密漁するのは漁業権の侵害だが、生け簀などで養殖している所から取ってしまうヤツもいる。これは単に泥棒だ。窃盗罪になり、俺たちみたいな者だとまず懲役になる。楽で簡単だが、やるヤツはバカだ」(A氏)
「現行犯でないと逮捕は難しい」
A氏自身もオホーツクの海で、何度も密漁したことがあるという。「捕まったことはない。ボートか船に船外機を2台取り付ければスピードが出る。普段は1台を使って走るが、いざという時は2台目もつけて逃げる。2台あればそのスピードは半端ない」。
見渡す限りの広い海で、密漁船を追いかけてくるのは警察の捜査船ではなく、海上保安庁が各地に設置している海上保安部の巡視船だ。領海侵犯した中国漁船に退去を求めて衝突された巡視船の映像は有名だが、あの船から逃げ切れるのかと聞くと、A氏の答えは「余裕だよ。問題ない。簡単なことだ」
「海には波がある。1mの波があれば、上と下で2mの高さだ。オホーツクは普段から波が荒いから、2mの波なら上下合わせて4m。4mもあれば、小さな船などあっという間に波に隠れて見えなくなる。海で小船を追いかけ続けるのは、想像するより難しいことだ。波の間をかいくぐっていけば、まず見つからない。それでも追いかけられれば、荷を捨てて、重量を軽くして、スピードを上げて逃げればいいだけだ」
「密漁は現行犯でないと捕まえるのは難しい」
荷を捨ててしまえば証拠はなくなる。密漁船、密漁者、密漁品を抑えなければ、現行犯逮捕はできない。
警察や海保を含め密漁を取締り監視する側は、どの船が密漁をしているのか、どれが密漁船なのか知っているとA氏はいうが、それでも港で捕まえるのは難しいと話す。
「船の名前や番号などは簡単に誤魔化せる。密漁している間は、変えてしまえばいいだけのこと。車のナンバープレートを偽造して張り替えておくようなものだ。港に戻った時には名前も番号も戻してある」