玲奈さんが撮影した西山を名乗る男
AはX社の内定をちらつかせ、数々の卑劣な要求を繰り返した。
「毎日電話とメッセージが届き、『言うことを聞かないとCAにはなれない』と繰り返されました。Aの言う通りに身体を要求されればそれに従い、彼氏とも別れ、お金も振り込んだ。途中で『これは本当の話なのか』と疑うこともあったのですが、『俺の言うことが信じられないのか!』と怒鳴られ、恐怖もあり誰にも相談できませんでした……」
結局玲奈さんは内定の約束を反故にされ、Aとの連絡も通じなくなってしまう。冒頭の電話は、失意のなか都内の自宅で就職活動を続けていた矢先のことだった。
彼女はどのような経緯で「就活詐欺」の罠にかかってしまったのか。
悪夢のような時間
玲奈さんが西山を名乗る男と出会ったのは昨年8月。場所はバイト先、都内のキャバクラだった。
「友人に『接客の勉強になるよ』と誘われ、コミュニケーション力が上がれば就職活動にも役立つかと思って始めました。就活中は昼間のアルバイトができないうえ、リクルートスーツや交通費などのお金が必要だったことも大きかった」
西山は、その店の常連客だったという。
「1回に100万円も使う羽振りのいいお客さんだった。私が西山に初めて指名された日、連れ合いの男性客と航空関係の話をしていて。『実は私、CAを目指しているんです』と話すと、連れ合いの男性が『この人、その会社の人だから、頼めばすぐだよ』と言うんです。
西山は大手航空会社・X社の大阪支社役員だと名乗り、副社長の名前をあだ名で呼んでいました。夜のお店での出会いなので疑いはしたのですが、内部事情に詳しくてつい信じ込んでしまった」
店では就活の話はできないと連絡先を渡され、後日玲奈さんが改めて電話をすると、銀座の喫茶店を指定され履歴書を持ってくるよう指示された。
そこで、「X社に縁故で入れてあげられる」と伝えられたという。
「コロナでCA職の採用は行なわれていないけど、『去年も数人縁故で入った人間がいる。自分が○○ちゃん(X社の副社長の名前)に言えば必ず入社させられる』と伝えられました。チャンスはここしかないと思い、つい『お願いします』と彼に頭を下げました」