国内

首都直下地震発生で“エレベーター閉じ込め”の危機「救出に12時間」の可能性も

阪神・淡路大震災で、黒煙を上げて燃え上がる神戸市内(1995年撮影、時事通信フォト)

阪神・淡路大震災で、黒煙を上げて燃え上がる神戸市内(1995年撮影、時事通信フォト)

 東京都は5月25日、首都直下地震の被害想定の新たな報告書を発表した。実に10年ぶりのことだ。最も巨大な「都心南部直下地震(M7.3)」が発生した場合、震度6強以上の揺れに見舞われる範囲は東京23区の約6割に広がり、建物被害は約19万棟、死者は約6000人に及ぶと試算された。

 これは前回の想定(2012年)と比較すると、建物の損傷も死者数も約3割減ということになる。都防災会議はその理由について「住宅の耐震化、延焼の恐れがある木造住宅密集地域の解消などが進んだことが要因」とした。それにはホッと胸をなで下ろす人も多いだろう。だが、京都大学名誉教授で地球科学者の鎌田浩毅さんはこう指摘する。

「この発表で安心感を持ってしまうのは非常にまずい。実際はもっと被害が出るはずで、都が示した見通しは甘いと言わざるを得ません」

 この10年で首都圏の街の様相は大きく変わった。たしかに木造住宅は減り、ビルの耐震化は進んだ。しかし、マンションやビルの高層化は急速に進み、ベイエリアなど地盤の弱い地域の人口が増え、地下街も広がった。実際に首都直下地震が起きたら本当に何が起こるのか──シミュレーションしながら考えてみたい。(以下《》内はシミュレーション)

《〇月×日午後1時過ぎ、港区や品川区など都心南部を震源とする直下地震が発生した。あなたは高層ビルの中でも高層階とされる25階のオフィスで地震に遭遇。半数ほどの社員がランチに出ていたが、スマホから鳴り響く緊急地震速報の警報音があちこちから聞こえる。

 まもなく大きな揺れがきて、同時に停電した。ビル全体が強風になびく柳のように左右に大きく揺れる。その振れ幅は5m以上。あなたは机につかまろうとするも、あっけなくすっ飛ばされ、壁にたたきつけられた。地上にいた人は、揺れがおさまってからもしばらく巨大なコンニャクのようにグニャグニャと揺れる高層ビルを見上げ、恐怖を感じたはずだ。

 高層階の中ではあちこちで悲鳴が上がり、まるで嵐の中の航海のようだ。キャスター付きの複合機や机、椅子などは、揺れに合わせて勢いよくオフィス内を左右に移動している。窓際に置いていたコピー機は何度もガラス窓に衝突、ついに突き破って地上に落下していった。もちろん、人間も立っていることができず、揺れに翻弄されるばかり。必死に床にしがみつくが、壁やオフィス家具に押しつぶされる人や、ついには割れたガラス窓から外に放り出されてしまう人も出た。

 揺れがおさまるのを待って、とにかく脱出しようと暗い廊下を人でごった返すエレベーターホールへと向かう。

 だがエレベーターは停止していた。前出の報告書によると、首都直下地震の直後は、都内2万2000基のエレベーターが一斉に停止する可能性があるという。しかも、直下地震では初動から本震までの時間が短く、最寄り階に安全に停止できない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

「鴨猟」と「鴨場接待」に臨まれた天皇皇后両陛下の長女・愛子さま
(2025年12月17日、撮影/JMPA)
《ハプニングに「愛子さまも鴨も可愛い」》愛子さま、親しみのあるチェックとダークブラウンのセットアップで各国大使らをもてなす
NEWSポストセブン
SKY-HIが文書で寄せた回答とは(BMSGの公式HPより)
〈SKY-HIこと日高光啓氏の回答全文〉「猛省しております」未成年女性アイドル(17)を深夜に自宅呼び出し、自身のバースデーライブ前夜にも24時過ぎに来宅促すメッセージ
週刊ポスト
人の出入りが多く流行っていたという火災があったサウナ店
《夫婦が閉じ込められ…》月額39万円の高級サウナ店での火災でサウナーたちに広がる不安 彼らはなぜ\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"避難シミュレーション\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"を議論するのか
NEWSポストセブン
今年2月に直腸がんが見つかり10ヶ月に及ぶ闘病生活を語ったラモス瑠偉氏
《直腸がんステージ3を初告白》ラモス瑠偉が明かす体重20キロ減の壮絶闘病10カ月 “7時間30分”命懸けの大手術…昨年末に起きていた体の異変
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《独占スクープ》敏腕プロデューサー・SKY-HIが「未成年女性アイドル(17)を深夜に自宅呼び出し」、本人は「軽率で誤解を招く行動」と回答【NHK紅白歌合戦に出場予定の所属グループも】
週刊ポスト
世間を驚かせたメイプル超合金のカズレーザー(41才)と二階堂ふみ(31才)の電撃“推し婚”
【2025年・有名人の結婚&離婚を総決算】何かと平和な「人気男性タレントと一般女性の結婚」、離婚決断が女性からの支持につながった加藤ローサ
女性セブン
米倉涼子
《米倉涼子の自宅マンション前に異変》大手メディアが集結で一体何が…薬物疑惑報道後に更新が止まったファンクラブは継続中
火事が発生したのは今月15日(右:同社HPより)
《いつかこの子がドレスを着るまで生きたい》サウナ閉じ込め、夫婦は覆いかぶさるように…専門家が指摘する月額39万円サウナの“論外な構造”と推奨する自衛手段【赤坂サウナ2人死亡】
NEWSポストセブン
自らを「頂きおじさん」と名乗っていた小野洋平容疑者(右:時事通信フォト。今回の事件とは無関係)
《“一夫多妻男”が10代女性を『イヌ』と呼び監禁》「バールでドアをこじ開けたような跡が…」”頂きおじさん”小野洋平容疑者の「恐怖の部屋」、約100人を盗撮し5000万円売り上げ
NEWSポストセブン
ヴァージニア・ジュフリー氏と、アンドルー王子(時事通信フォト)
《“泡風呂で笑顔”の写真に「不気味」…》10代の女性らが搾取されたエプスタイン事件の「写真公開」、米メディアはどう報じたか 「犯罪の証拠ではない」と冷静な視点も
NEWSポストセブン
来季前半戦のフル参戦を確実にした川崎春花(Getty Images)
《明暗クッキリの女子ゴルフ》川崎春花ファイナルQT突破で“脱・トリプルボギー不倫”、小林夢果は成績残せず“不倫相手の妻”の主戦場へ
週刊ポスト
超有名“ホス狂い詐欺師風俗嬢”だった高橋麻美香容疑者
《超有名“ホス狂い詐欺師風俗嬢”の素顔》「白血病が再発して余命1か月」と60代男性から総額約4000万円を詐取か……高橋麻美香容疑者の悪質な“口説き文句”「客の子どもを中絶したい」
NEWSポストセブン