乳製品などの冷蔵品も扱う。「ドサッとバラバラに陳列していいと伝えているんですが、スタッフは真面目なので、つい日付ごとに陳列しちゃうみたいです(笑い)」
ユーザーの半数以上が食品ロスに関心
冒頭の店頭の様子に戻ろう。13時前。開店直前ともなると、いつもできるという行列は20mほどの長さに! 行列客に来店の動機を尋ねると……。
「正直、安さが魅力で。開店直後は品揃えも豊富だから、来るならオープン直後だと思って、この時間を狙ってきました」(20代女性)
「近所に住んでいるお友達から評判を聞いて通うように。同じ買うなら、食品ロスに貢献できる方がいい。賞味期限が切れたって、消費期限と違うでしょう。それほど味は落ちないし、主人も気づかないくらいよ」(60代女性)
「食品ロスって地球の問題だから、当たり前のことじゃない? 無駄なものを買うつもりはないです。わが家で食品ロスしてたら意味がないから」(40代女性)
話を聞いた半数以上が食品ロスに関心があり、来店していることがわかった。
「きっかけは“安いから買う”でいいんです。結果的に食品ロス対策につながっているのであれば」と山中さん。そこにはSDGsを振りかざすような雰囲気はない。
「正直言うと、始めたばかりの頃は“いいことをしているぞ”っていう気負いがありすぎて、お客さんにディスカウントショップ扱いされると悔しくなったり腹が立ったりしたこともあります。だけど、徐々に知ってもらえればいいと、最近思うようになりました。
というより、考え方をちょっと切り替えてもらえればいいのかな、とも思うんです。果物って見栄えは少し悪くなるかもしれないけど、完熟した状態がとても食べ頃ですよね。“いま食え”という言葉を『iiMaquet』という店名の綴りにも入れましたが、いま食べ頃のものがここで買えるって考えていただければOKかなと」
年間570万トンといわれる食品ロス(令和元年度推計)だが、同店だけで年間約300tの削減に貢献している。
「究極的にはこの仕事がなくなることが理想なのかもしれません。でもそれまではやるべきことがあるし、廃棄食品のみのレストランとか無料スーパーもやってみたいんですよ。まだ道のりが長くてちょっと恥ずかしいけど(笑い)」
その眼差しはまっすぐだ。
iiMaquet(アイアイマーケット)
【住所】東京都世田谷区野沢2-31-3(1号店)、同3-31-1(2号店)
【営業時間】13〜19時
【定休日】日曜(営業することもあります)
撮影/深澤慎平 写真提供/TPC 取材/加藤みのり 取材・文/辻本幸路
※女性セブン2022年6月23日号