ビジネス

50億円詐欺事件の全貌 上場企業経営者らはなぜインド人金融業者に騙されたのか

stock

「IPO(新規公開株)の特別枠」が詐欺スキームの核となった

 上場企業が舞台となった、いまだ不可解な点が多い巨額詐欺事件。ジャーナリスト・伊藤博敏氏がレポートする。

 * * *
 1年で43%もの配当を得たと思ったら、まったくの詐欺で約50億円を失ってしまった――。こんな大失態を冒した上場企業のオウケイウェイヴ(名証ネクスト)が、6月10日、外部の専門家で構成する調査委員会の報告書を開示した。

 そもそも、どんな投資だったのか。

「IPO(新規公開株)の特別枠があるので確実に儲かります」

 こんなセールストークでオウケイウェイヴに投資させたのは、インド人金融業者のスニール・ジー・サドワニ氏。資本金20万円のRaging Bullという合同会社を経営する。既にRaging社は債務整理を弁護士に一任、自己破産を申請することになっており、スニール氏は「特別枠などなく運用実績も含めすべてウソだった」と、弁護士に告白している。

 高利を約束、資金を集めながら、それを他の投資家の支払いに充てる詐欺商法は、米の天才的詐欺師の名を取って「ポンジスキーム」と呼ばれる。最後は自転車操業に陥って破たんは必至。ただ、最初は約束通りの高利を支払って信用させ、それを再投資させて元本を大きくし、できるだけ破たんを先送りする。その間に幾ら“抜く”かが、ポンジスキームを操る詐欺師たちの“腕”である。

横浜生まれ、完璧な日本語を操るインド人

 スニール氏は、1966年、横浜市に生まれた。インターナショナルスクールを経て上智大学に入学し卒業。大手証券勤務、翻訳関係のソフトウェア会社の創業と売却などを経て、10年にRaging社を立ち上げた。

 多彩な経歴、豊富な人脈と、完璧な日本語を操るスニール氏の人当たりの良さで、Raging社は順調なスタートを切った。同時期、同じ金融会社のHAMABAY CAPITALを設立。大学時代からの知り合いのモハメッド・イク氏が共同代表で、イク氏にも国内外の人脈があった。

 スニール、イクの両氏は、株価指数先物やオプション取引を中心業務としていたが、やがてスニール氏はオプション取引で7億円程度の損失を出すに至る。その“穴”を埋めるために、Raging社で2017年頃から「IPOの特別枠」という詐欺商法を展開するようになったという。

 普通に考えれば、数十パーセントの配当が“確実”に約束されるようなうまい儲け話が転がっているわけはない。しかし、目先の配当に幻惑されて、関与した投資家は100名(社)以上で、動いた金額は約300億円。そのうち少なくとも約150億円が回収不能となる巨額詐欺事件だ。

 被害者としてオウケイウェイヴ以外に、大手流通創業家、中国映画プロデューサー、金融サービス会社代表などの名が上がっており、未確認ながら閣僚を経験した大物女性議員の名もある。

 オウケイウェイヴは上場企業として、内部と外部の双方から厳密なチェック体制を敷いており、しかもフィンテック事業に進出していた経緯から、一時、OKプレミア証券、暗号資産のcOban(コバン)取引所を傘下に収めるなど、金融システムには精通していた。

関連記事

トピックス

5月8日、報道を受けて、取材に応じる日本維新の会の中条きよし参議院議員(時事通信フォト)
「高利貸し」疑惑に反論の中条きよし議員 「金利60%で1000万円」契約書が物語る“義理人情”とは思えない貸し付けの実態
NEWSポストセブン
殺害された宝島さん夫婦の長女内縁関係にある関根容疑者(時事通信フォト)
【むかつくっすよ】那須2遺体の首謀者・関根誠端容疑者 近隣ともトラブル「殴っておけば…」 長女内縁の夫が被害夫婦に近づいた理由
NEWSポストセブン
曙と真剣交際していたが婚約破棄になった相原勇
《曙さん訃報後ブログ更新が途絶えて》元婚約者・相原勇、沈黙の背景に「わたしの人生を生きる」7年前の“電撃和解”
NEWSポストセブン
なかやまきんに君が参加した“謎の妖怪セミナー”とは…
なかやまきんに君が通う“謎の妖怪セミナー”の仰天内容〈悪いことは妖怪のせい〉〈サントリー製品はすべて妖怪〉出演したサントリーのウェブCMは大丈夫か
週刊ポスト
令和6年度 各種団体の主な要望と回答【要約版】
【自民党・内部報告書入手】業界に補助金バラ撒き、税制優遇のオンパレード 「国民から召し上げたカネを業界に配っている」と荻原博子氏
週刊ポスト
グラビアから女優までこなすマルチタレントとして一世を風靡した安田美沙子(本人インスタグラム)
《過去に独立トラブルの安田美沙子》前事務所ホームページから「訴訟が係属中」メッセージが3年ぶりに削除されていた【双方を直撃】
NEWSポストセブン
エンゼルス時代、チームメートとのコミュニケーションのためポーカーに参加していたことも(写真/AFP=時事)
《水原一平容疑者「違法賭博の入り口」だったのか》大谷翔平も参加していたエンゼルス“ベンチ裏ポーカー”の実態 「大谷はビギナーズラックで勝っていた」
週刊ポスト
阿部詩は過度に着飾らず、“自分らしさ”を表現する服装が上手との見方も(本人のインスタグラムより)
柔道・阿部詩、メディア露出が増えてファッションへの意識が変化 インスタのフォロワー30万人超えで「モデルでも金」に期待
週刊ポスト
中条きよし氏、トラブルの真相は?(時事通信フォト)
【スクープ全文公開】中条きよし参院議員が“闇金顔負け”の年利60%の高利貸し、出資法違反の重大疑惑 直撃には「貸しましたよ。もちろん」
週刊ポスト
店を出て並んで歩く小林(右)と小梅
【支払いは割り勘】小林薫、22才年下妻との仲良しディナー姿 「多く払った方が、家事休みね~」家事と育児は分担
女性セブン
大の里
新三役・大の里を待つ試練 元・嘉風の中村親方独立で懸念される「監視の目がなくなる問題」
NEWSポストセブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン