簡単に騙される環境とは思えないのに、なぜ余裕資金の大半をポンジスキームに投じたのか。6月10日の調査委員会報告書で、何が解明されたのか。報告書で、まず確認されたのは、〈本件投資開始の経緯〉である。
取締役会のたびに被害が膨らんだ
オウケイウェイヴは、1999年、兼元謙任氏が日本で最初のQ&Aサイトを立ち上げて創業した。現在、兼元氏は経営を退き、プロパーの福田道夫氏と野崎正徳氏が取締役を務める。代表は福田氏だ。
2人は2021年3月頃、前年にメインのソリューション事業を約71億円で売却したために発生した約60億円の特別利益を、どのように運用するか頭を悩ましていた。その際、福田氏が相談を持ちかけたのが、以前、関連事業で世話になったイク氏で、イク氏からスニール氏を紹介され、野崎氏が担当することになった。
まず3億4000万円の投資が検討され、2021年4月6日の取締役会で承認された。この投資が1億5000万円の利益をもたらし4億9000万円が入金されたことから、7月14日の取締役会で10億円の投資が承認可決される。ポンジスキームにハマったわけで、金額は取締役会のたびに膨らんで、約50億円の焦げつきに至る。
報告書が注目するのは社外取締役の廣瀬光伸氏の役割だ。上場企業のAppBankを始めさまざまな業態の企業で役員を経験、オウケイウェイヴではその経歴と、暗号資産の知識を買われて、2019年9月、社外取締役に就いた。その廣瀬氏が親交を持っていたのがイク氏で、スニール氏の「IPO特別枠投資」は、オウケイウェイヴが始めるより前の2020年頃から行っていたという。
「投資」は繰り返された(写真は東京証券取引所)
報告書は、〈役員等の関与・認識〉のなかで、かなりの部分を割いて廣瀬氏の関与に論及している。「詐欺スキームと知って勧誘していたのではないか」という疑問からだ。廣瀬氏がスニール氏と業務顧問契約を結び、顧客紹介手数料を受け取っていたのだから当然だろう。
結論からいえば、詐欺への加担は否定している。【1】投資金の元本と利益が自身の関係口座に振り込まれると、その大半をRaging社の口座に再投資していること、【2】イク氏に対して、「以前からお話ししている通りOKについては、私は利害関係者に当たりますので、そもそも紹介料を受け取れません」と、メールしていることなどから〈詐欺であると知ったうえで、やり取りしている形跡はない〉としている。
廣瀬氏以外の役員についても、Raging社並びにスニール氏との間に、金銭の授受を含む特別な関係は認められなかったという。そのうえで報告書は、〈争点及び争点に関する当委員会の見解〉に踏み込んでいる。