調査報告書は隔靴掻痒の感も
問題とされたのは、廣瀬氏がオウケイウェイヴが投資をする前から個人的にRaging社と取引関係にあり、業務委託契約を結んでいた利害関係を有する取締役であったこと。その立場で廣瀬氏が、Raging社との関係を秘匿して投資への賛成議決権を行使したのは、〈(特別利害関係取締役が議決権を行使できないことを定めた)会社法369条2項に違反する行為であり、善管注意義務違反・忠実義務違反が認められる〉としている。
ただ、前述のような理由で廣瀬氏とRaging社との〈共犯性を認定するのは困難〉とし、廣瀬氏の議決権行使を除外しても〈賛成多数により決議が成立し、その効力は否定されない〉という。また、廣瀬氏以外の取締役の責任について言及しておらず、結論として〈取締役決議の意思決定について、決定の過程に軽率な部分は認められるものの、過程・内容に著しく不合理な点があったとまでいえず〉としている。
調査報告書は、あくまで任意で行われており、詐欺を告白したスニール氏と同氏の「IPO特別枠投資」をサポートしたイク氏の証言は取れていない。また、最近はこうした第三者委員会の調査に欠かせないコンピュータやデジタル記録媒体に残された証拠を調査・解析するフォレンジックを行っておらず、隔靴掻痒の感は免れない。
ただ、近いうちにRaging社の破産開始決定が出され、管財人が決まって被害金額と被害の実態が明らかにされよう。同時に、オウケイウェイヴなど被害者が警視庁に刑事告訴、捜査が始まる。上場企業を巻き込んだ大型詐欺事件の全容解明が待たれる。