私の母は近所の人たちと時間も気にせず、ああでもないこうでもないと道端で世間話をするのが日課です。「野菜余ったから使って」「ウチの畑で取れたからどうぞ」とお裾分けすることなんてしょっちゅうです。目の前に誰かがいたときに、「とりあえずつながりをもっておこう」ではなく、「つながったからには濃く付き合っていきたい」と考えるのが自然でした。社交辞令としての「今度ご飯行こうよ」は、青森にいたときは存在しなかった文化なので、少し悲しいです(笑い)。
最近、同郷で同い年の遠藤和(のどか)さん(享年24)が、大腸がんステージⅣを患いながら娘さんのために書いた『ママがもうこの世界にいなくても』という本を読んだのですが、彼女の他人との関わり方には青森の人らしさを感じました。
和さんは、夫となる遠藤将一さん(31才)と出会った初日から、彼に猛アタックをして、数か月後には半同棲状態までもっていくんですよ。えっ! と思う人もいるかもしれないですが、私はそこまで驚かなかったです。青森の人なら……と思ってしまう自分がいました(笑い)。
ステージⅣの大腸がんを宣告されても、それでも「母になりたい」と強く願う和さんの気持ちも、わかるような気がしました。青森にもいろいろな仕事はあるけれど、東京と比べると、どうしても限られてくる。だから、仕事ではなくて、家庭に夢をもつ側面があるんじゃないかな。ずっと青森にいたい、ゆくゆくは家庭をもって、自分の子供を育てたいというのが「将来の夢」だという人はたくさんいると思います。
同じ青森県出身で、同い年の和さんには、本を読み進めていくうちにどんどん親近感がわきました。最後は泣いてしまいました。悲しさだけの涙ではなくて、病気と闘ってお疲れ様という気持ちと、彼女がいなくなってしまってさみしいという気持ちと……いろいろな感情が混ざった涙でした。
◆浅倉唯(あさくら・ゆい)
1996年、青森県生まれ。女優。『仮面ライダーリバイス』(テレビ朝日系)で、悪魔崇拝組織デッドマンズの首領・アギレラもとい夏木花役を好演中。