江戸から南に約180キロ離れた三宅島での流人生活は11年に及んだ

江戸から南に約180キロ離れた三宅島での流人生活は11年に及んだ

 広治は一蝶から紹介された吉原の遊女を身請けするなど、放蕩生活にどっぷりハマる。挙げ句の果てに吉原で奉行所の役人と一悶着起こし、その様子が瓦版で江戸中に知られてしまい、高家の職を解任された。そのことが桂昌院の逆鱗に触れ、元禄十一年(1698年)にまたも一蝶や民部は捉えられてしまう。騒ぎを起こしたのは広治なのだが、幕府としては今度こそ「毒虫」を処分する絶好の機会。前回の“逮捕容疑”だった綱吉の風聞の件を強引にこじつけて、一蝶らを三宅島へ流罪としたのである。

 三宅島に流された一蝶は、画材の入手に難儀しながらも吉原で遊んだ日々の様子などを次々と作品にする。だが、三宅島には一蝶の絵はほとんど残っていない。売れっ子画家の作品を求め、江戸から画商たちが荒波を越えて三宅島に出向き、あらゆる作品を買い取っていったからだという。

 一蝶の流罪が解かれるのは宝永六年(1709年)のこと。この年の1月に将軍・綱吉が没し、家宣が第6代将軍に就く。それに伴う大赦によって、ようやく江戸に戻ることができた。すでに58歳を迎えていたが、それから画号「一蝶」を名乗り、数々の名作を生み出したのであった。

※英一蝶(1652-1724)/京都生まれの画家。9歳頃に江戸に移り住み、狩野派を学ぶ。風俗画家に転身した後は「多賀朝湖」を名乗る。三宅島に11年の流罪後、英一蝶と改名。

【筆者プロフィール】
竹内明彦(たけうち・あきひこ)/1951年、東京都生まれ。1976年に早稲田大学文学部を卒業後、出版社入社。退職後に江戸歴史文化検定協会理事を務めた。近著『文人たちの江戸名所』(世界書院)では英一蝶のほか、松尾芭蕉、平賀源内ら、江戸文化人の異色エピソードとゆかりの地について、史料を紐解きながらコミカルに解説している。

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