『大都会』ができるまで

(撮影/五十嵐美弥)

現在はシルバーヘアー(撮影/五十嵐美弥)

 田中さんは佐賀県伊万里市の出身。野球が好きな少年でプロ野球選手を目指していたが、子どもの頃から歌が上手かったことから、高校1年のときに音楽の道へ方向転換した。バンド活動を始め1973年、長崎・佐世保で『クリスタルキング』の“原形”バンドができ、米軍キャンプやディスコなどで活動。のちに佐世保から博多へ拠点を移し、九州では人気のバンドへと成長した。

「野球やってたときは坊主頭やった髪を、音楽始めたときに伸ばして。オレの髪はもともとストレート。それをセンターで分けて腰まで伸ばしてた。『クリスタルキング』に入った後、ディスコブームでアフロヘアが流行ったからアフロに。当時はボリュームがあって、雨が降っても雨を通さず“傘いらずヘア”でした(笑)。白髪になっていつの頃からか染めてたけど、頭皮にダメージ与えるから2年前にやめました。ロックシンガーのプライドをもって生きてるもんで、このヘアスタイルができなくなったらステージには立てないですね」

 1976年にはカバー曲『カモン!ハッスルベイビー』を九州地区でリリース。九州ではヒットしたが、1日9ステージこなす多忙さにメンバーは煮詰まっていった。「新しい風を吹かせたい」と、解散記念で出場した1979年のヤマハポピュラーソングコンテストでグランプリ受賞。世界歌謡祭ではグランプリと歌唱賞をダブル受賞した。そのときの曲が『大都会』で、キャニオン・レコードから全国区で発売され大ヒット。翌年には「NHK紅白歌合戦」にも出場した。大展開の一発だったのだ。

「『大都会』はコンテストでグランプリを取ることを狙って作った曲だったんです。オレら妻子持ちのおっさんバンドやったから、グランプリを取っても売れるて思ってなかったのに、あれよあれよという間に売れて、オレはここまで歌ってこられた。今、振り返るとエントリーして大正解やったな、と。他のメンバーもそれぞれ『オレがあの歌を歌った、演奏したんや』て一生の宝になってると思います」

『大都会』以外にも、『愛をとりもどせ!!』がアニメ『北斗の拳』(フジテレビ)の主題歌に起用され、『クリスタルキング』脱退後は『ウルトラマンガイア』(TBS)や『仮面ライダークウガ』(テレビ朝日)の主題歌、ゲームでは『塊魂』テーマソングや『仮面ライダー サモンライド!』主題歌など幅広い層の記憶に残る歌を歌ってきた。

「一時、九州に帰っていたときに喉をケガしたことで、もうあんな高音は出ませんけど、スキルは磨いてきましたし、自分の人生を反映させて歌っていますから、今のほうが歌はうまいと思いますよ。今のハスキーボイスがいいという人も増えてきました。3か月に1度のペースでライブをしてますけど、今はYouTubeなどで昔の曲が聴けるので、それで興味をもって聴きにきてくれる若い方も多いですね」

 今の田中さんと吉崎さんのツインボーカルで『大都会』を聴けないのは残念だが、ソロ活動が充実しているようだ。7月1日、東京・目黒のライブハウス「Blues Alley Japan」でバースデーライブ「Restart」を行う。

関連キーワード

関連記事

トピックス

解散を発表したTOKIO(HPより)
《TOKIO解散には迷いなし?》松岡昌宏、「男気会見」で隠せなかった本音 唯一違った“足の動き”を見せた質問とは?
NEWSポストセブン
佐々木希と渡部建
《六本木ヒルズ・多目的トイレ5年後の現在》佐々木希が覚悟の不倫振り返り…“復活”目前の渡部建が世間を震撼させた“現場”の動線
NEWSポストセブン
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
児童盗撮で逮捕された森山勇二容疑者(左)と小瀬村史也容疑者(右)
《児童盗撮で逮捕された教師グループ》虚飾の仮面に隠された素顔「両親は教師の真面目な一家」「主犯格は大地主の名家に婿養子」
女性セブン
組織が割れかねない“内紛”の火種(八角理事長)
《白鵬が去って「一強体制」と思いきや…》八角理事長にまさかの落選危機 定年延長案に相撲協会内で反発広がり、理事長選で“クーデター”も
週刊ポスト
ディップがプロバスケットボールチーム・さいたまブロンコスのオーナーに就任
気鋭の企業がプロスポーツ「下部」リーグに続々参入のワケ ディップがB3さいたまブロンコスの新オーナーなった理由を冨田英揮社長は「このチームを育てていきたい」と語る
NEWSポストセブン
たつき諒著『私が見た未来 完全版』と角氏
《7月5日大災害説に気象庁もデマ認定》太陽フレア最大化、ポピ族の隕石予言まで…オカルト研究家が強調する“その日”の冷静な過ごし方「ぜひ、予言が外れる選択肢を残してほしい」
NEWSポストセブン
佐々木希と渡部建
《渡部建の多目的トイレ不倫から5年》佐々木希が乗り越えた“サレ妻と不倫夫の夫婦ゲンカ”、第2子出産を迎えた「妻としての覚悟」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《東洋大学に“そんなことある?”を問い合わせた結果》学歴詐称疑惑の田久保眞紀・伊東市長「除籍であることが判明」会見にツッコミ続出〈除籍されたのかわからないの?〉
NEWSポストセブン
愛知県豊田市の19歳女性を殺害したとして逮捕された安藤陸人容疑者(20)
事件の“断末魔”、殴打された痕跡、部屋中に血痕…“自慢の恋人”東川千愛礼さん(19)を襲った安藤陸人容疑者の「強烈な殺意」【豊田市19歳刺殺事件】
NEWSポストセブン
都内の日本料理店から出てきた2人
《交際6年で初2ショット》サッカー日本代表・南野拓実、柳ゆり菜と“もはや夫婦”なカップルコーデ「結婚ブーム」で機運高まる
NEWSポストセブン