「審議のプロセスが公開されていない限り、民主主義ではない」
国家の進路にはまずビジョンが必要で、それには審議会の委員や官僚による政策提言が重要です。僕が立ち上げた民間臨調「モデルチェンジ日本」(メンバーに松田公太氏、原英史氏、冨山和彦氏、安宅和人氏ほか)のように、外側からも政策提言をする必要がある。
そしてそれがどういうふうに審議されて、結論に至ったかが見えなければいけない。民主主義とは多数決のことではなく、審議と討論のプロセスのことです。参議院で標榜される「熟議」のように、議論を深めてきちんと熟させ、アウフヘーベンするような結論を導き出すのが本来の民主主義です。
一見、日本は独裁者がいないように見えるけれども、独裁者の心の中で決めたことと、独裁者がいなくても何となく決まっていくというのは、見えない人の心の中で決まっていく点で同じ。審議のプロセスが公開されていない限り、民主主義ではない。中国やロシアと、日本は似ていないようで似ているわけです。
霞ヶ関にたくさんの官僚がいて、それなりに皆一生懸命やっていろいろなことを決めるけれども、そのプロセスが見えない。積極的な情報公開により、政策決定過程の透明化をすることが、この国には必要です。
【プロフィール】
猪瀬直樹(いのせ・なおき)/1946年長野県生まれ。作家。1987年『ミカドの肖像』で大宅壮一ノンフィクション賞。1996年『日本国の研究』で文藝春秋読者賞。東京大学客員教授東京工業大学特任教授を歴任。2002年、道路公団民営化委員。2007年、東京副知事。2012年、東京都知事。2015年、大阪府・市特別顧問。主著に『天皇の影法師』『昭和16年夏の敗戦』『猪瀬直樹電子著作集「日本の近代」(全16巻)』があるほか、近著に『日本国・不安の研究』『公(おおやけ) 日本国・意思決定のマネジメントを問う』『カーボンニュートラル革命』など。2022年夏の参院選に、日本維新の会の公認候補として全国比例に出馬予定。