「期待しない心」を作る方法
自律神経に悪影響があるのは相手に期待する感情も同様だ。
「他人に期待を向け、思い通りの結果が得られなかった場合、真っ先に生まれる怒りの感情は、喜怒哀楽のうちもっとも自律神経を乱すといわれています。
人は激怒すると顔が真っ赤になり、手がワナワナと震えますが、それは血管が収縮して心拍数が上がり、末梢神経に送り出す酸素や栄養が不充分になって細胞が苦しんでいるサインです。こうした状況が続けば血流や血管に大きな負担がかかることは間違いありません」
怒りの感情による負担に加え、自律神経の乱れは頭痛や倦怠感、ひいてはうつ病など命を奪いかねない大きな病気を引き起こすこともある。
「実際に、自律神経失調症と診断された芸能人が亡くなったケースもありましたが、自律神経の乱れは心身を大きく蝕んでしまう。
特に10代や20代の若者であれば期待によって自律神経を乱されたとしても回復できる力が備わっていますが、年を重ねるほどに自律神経の乱れを整えるのは難しくなる。だからこそ、日々の暮らしの中でも“期待”を手放し、心を整えることを意識することが大切なのです」
“あなた=私”ではないと心得る
血管病からうつ症状まで、これほどまでに心身に大きな負担を強いる「期待する心」は、すぐに手放すに越したことはない。そのためにまず取り組むべきは「自分ルール」を定めることだ。
「私も昔は期待や怒りで自律神経を乱してしまっていましたが、あるとき『他人に心身を乱されることに余計な時間を使うのはもったいない』と気がつき、それ以降は『怒らない』『期待しない』ことを自分の中のルールとして定めるようにしました。
すると自分がやるべきことだけに集中できて、他人の言動は一切気にならなくなる。
そもそも、多くの人は『私はこう思うのだからあなたも同じ意見のはず』『これだけやってあげたんだから感謝するべき』といった思考に支配され、自分と他人の境界線があやふやになっている。
“あなた=私”ではない、という事実を受け入れて生きていれば、期待による怒りやショックを最小限に抑えることができます」