産直ECからの注文で窮地を脱した

産直ECからの注文で窮地を脱したきのこ農家の渡辺海さん

「感謝の気持ちでいっぱいです」

 コロナ禍の窮地を、産直ECで全国の消費者に買ってもらうことで救われたのは、茨城県の農業法人できのこをつくっている渡辺海さん(茨城県東茨城郡)も同じだ。

「道の駅や農産物直売所、飲食店に卸していたのですが、これらは観光客相手のところなので、人出がなくなってしまったことで売れなくなってしまった。2020年の3月はもう本当に追い込まれていました。

 そのころ、たまたまテレビに取り上げられて『困ってます、助けて下さい』という声を上げたら、ECでの売上が増えていきました。ポケットマルシェ、食べチョク、自社のECサイトからの売上は、以前は全体の1%にも満たないほどでしたが、10%を占めるまでになり、窮地を脱することができたんです。感謝の気持ちでいっぱいです」(渡辺さん)

 こうした産直ECは、コロナ禍を追い風にして成長している。ポケットマルシェの運営会社「雨風太陽」の中山拓哉さん(生産者・CS部 部長)によると、コロナ以前、ポケットマルシェの登録数は生産者が2000人、消費者が5万人程度だったが、現在は前者が6800人、後者が54万人にまでそれぞれ拡大したという。

 急拡大の背景としては、コロナ禍の「巣ごもり需要」や消費者による「生産者応援」ムーブメントなどが挙げられるが、「それらを後押ししたのが、生産者と消費者をつなげるポケットマルシェのSNS機能ではないか」と中山さんは推測する。ポケットマルシェの生産者の出品ページには商品ごとに質問やメッセージを送る機能が備えられており、生産者と消費者が直接、双方向でやり取りできるようになっている。

ポケマルを運営する雨風太陽の中山氏

ポケットマルシェを運営する「雨風太陽」の中山拓哉さん

「消費者にとっては生産者の“顔が見える”ので安心だし、感想を伝えることもできる。今後、こんなものが食べたいと要望を出すこともできます。生産者にとっても消費者がどんな人なのかわかるし、直接お礼が言えます。生産者は、消費者から直接『おいしかった』と言われることがモチベーションアップにつながると口を揃えています」(中山さん)

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