修学旅行専用電車「ひので号」で、記念撮影をする生徒たち。提供:鉄道博物館
【修学旅行】新幹線登場前、子供たちは「修学旅行専用列車」で全国へ
日本の修学旅行は、明治15年、栃木の中学校の生徒たちが先生に引率され、東京・上野で勧業博覧会を見学したのが始まりとされる。
その後、戦後の高度成長期になると大量輸送できる列車やバス利用が主流となり、昭和34年には東京都中学校連合の「ひので号」、京阪神三市中学校連合の「きぼう号」という修学旅行専用列車が誕生する。以来、昭和40年代前半にかけて近畿・中国・九州などエリアごとに修学旅行専用列車が登場した。
写真は昭和34年の品川駅から出発する修学旅行専用列車「ひので号」の出発前風景だが、この時代は品川駅周辺に高い建物がまだ何もないことがわかる。
「ぼくが中学生のときの修学旅行も『ひので号』で、東京から京都・奈良と関西方面に行きました。クラスメートと一緒の電車で旅するのはやっぱり特別で、高揚感がありましたね」(松本さん)
一方、30代の蜂谷さんの修学旅行は、新幹線の旅だ。
「地元の福井から米原駅に出て新幹線に乗り換えたのですが、『乗り遅れたら大変だ』と体育館で整列して新幹線に乗り込む練習を何度もさせられたのを覚えています」
写真は昭和45年の修学旅行での新幹線の車内風景。この年はちょうど大阪万博の開催年だけに、おそらく関西方面を訪れた修学旅行生も多かったのではないだろうか。
修学旅行写真から時代時代の空気が伝わってくる。
昭和45年頃になると、新幹線で修学旅行に行くのが定番に。提供:鉄道博物館
【鉄道と歌】唱歌から歌謡曲、フォークまで、旅心をそそる名曲多数
鉄道は明治・大正・昭和・平成・令和と5つの年号をまたぐほど歴史が長い。それだけに、鉄道唱歌からJ-POPまで、鉄道にまつわる曲の記憶は世代ごとにさまざまだ。
「私は母親の影響で、中島みゆきの『ホームにて』やチューリップの『心の旅』『せめて最終電車まで』などの曲が好きで、よく聴いています。かつては上京や別れ、望郷などを鉄道絡みで歌った名曲が多かったのに、私の世代では少ないんです」(蜂谷さん)
表に挙げたCMソングやヒット曲はほんの一部で、これ以外にも隠れた鉄道絡みの名曲はたくさんある。この夏は、わが心の鉄道ソングを口ずさみながら、思い出に残る鉄道旅を楽しんでみてはどうだろう。
【プロフィール】
鉄道ジャーナリスト・松本典久さん/1955年東都京生まれ。鉄道をテーマに著作活動を行う。著書に『紙の上のタイムトラベル 鉄道と時刻表の150年』(東京書籍)など。
漫画家・やすこーんさん/1968年青森県生まれ。駅弁や駅そばが好きな女性漫画家で、寝台特急『サンライズ』の大ファン。『やすこーんの鉄道イロハ』(天夢人)など著書多数。
旅の文筆家・蜂谷あす美さん/1988年福井県生まれ。祖父が元国鉄の車掌。慶応大学では鉄道研究会所属。JR全線完乗済。『女性のための鉄道旅行入門』(天夢人)など。
取材・文/北武司
※女性セブン2022年7月7・14日号