芸能

『ちむどんどん』はNHK朝ドラとして、視聴者との約束を果たせているか

黒島結菜がヒロインを務める『ちむどんどん』

黒島結菜がヒロインを務める『ちむどんどん』

 NHKの朝ドラは、視聴者の幅広さやその視聴習慣という点からも独特な枠である。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が考察した。

 * * *
 通信大手KDDIによる大規模な通信障害が発生してから約一週間。通話やデータ通信のみならず、物流や119番の救急連絡など命に関わる事案にまで不具合が起こり、日本中が混乱しました。今回の出来事によって身に沁みたこと。それは私たちの生活において、いかにスマホが「インフラ」となっているのか、でした。

 さて、話はそこまで大げさではないけれど、「インフラ」という視点から考えてみると、なるほどと合点するのがNHK朝ドラの存在です。毎朝8時から15分間、月曜日から金曜日(土曜日は振り返り編)。舞台は、都市や有名観光地のみならず日本全国津々浦々。名も知らぬ地域も舞台になり、気候や生活・文化が少しずつ違う多様性に満ちた風土を背景にしてさまざまな人や仕事、生活ぶりが描かれていく。

 朝ドラの視聴者数は2000万人超(『ちむどんどん』初回、タイムシフト視聴含む。ビデオリサーチ調べ)、とにかく巨大なボリュームです。しかも個人宅のテレビだけでなくお店や病院、待合室など公共的な場でも日々流されている大衆性。そう、内容の好き嫌いを超えてNHK朝ドラは、いわば日本の「生活・文化的インフラ」なのだ、と気付きました。

 という気付きから、今放送中の『ちむどんどん』を見てみると。多くの指摘や疑問点、批判が寄せられていることにも、なるほどと腑に落ちるものがあります。

 インフラだとすれば、日本で暮らす多くの人々が一般的に共有している感性や慣習、常識に基づいて物語が描かれていくはず……無意識のうちに視聴者はそれを期待している。

 たとえば、頂き物はまず頂いた人に渡す。その人がいないところで勝手に中を開けない。ましてや、食べてしまったりしない。

 清潔さを大切にする。料理人は身ぎれいにするのが当たり前。厨房では髪をアップしてまとめるのは常識。

 約束事は勝手に覆さない。一度「銀座の高級料理店」という設定にしたら、突然大衆食堂のようになってはいけない。料理人が床にひっくり返って料理をぶちまけたり、予約なしに大勢押し寄せたりすると、視聴者との約束が反故になってしまう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

絶頂期のブルゾンちえみ。2017年撮影(時事通信フォト)
《ブルゾンちえみ》独立で芸名使えなくなった藤原しおり「SNS全閉鎖」の背景に“苦渋の決断”
NEWSポストセブン
『ガオレンジャー』出演中の金子昇と小学生のころの次女・のあさん
「俳優をやめて実家へ」金子昇がコロナ禍での引退覚悟を語る その父の背中を見て育った18歳の愛娘が芸能の道へ
NEWSポストセブン
大阪桐蔭・前田
“アウェー”の甲子園で敗れた前田悠伍の誓い 大阪桐蔭史上最高の投手を「目指したい」
NEWSポストセブン
65才の2人を目撃
《65才とは思えない》ピンク・レディーのミーとケイ「すごい現役感」驚愕の私服姿
NEWSポストセブン
“NHK御用達”“灘から東大”超エリートピアニストの不倫密会を女性が告発 「妊娠したらどうしようと不安だった」
“NHK御用達”“灘から東大”超エリートピアニストの不倫密会を女性が告発 「妊娠したらどうしようと不安だった」
女性セブン
フジテレビ女性アナの意外なエピソードも(写真は宮司愛海アナ/ロケットパンチ)
宮司愛海アナはアニソン好き、佐久間みなみアナの弾き語りはプロ顔負け…フジ女性アナのすごい特技
週刊ポスト
シャンパンファイトでは率先して輪の中心に(写真/共同通信社)
大谷翔平の食生活 得意料理はパエリア、酒は飲めるが必要性を感じないため飲まない
女性セブン
みきママが離婚発表、“シングルファーザー宣言”の元夫に直撃 親権は「まだ決まってない」
みきママが離婚発表、“シングルファーザー宣言”の元夫に直撃 親権は「まだ決まってない」
女性セブン
スーツ姿のサマになる(2022年。写真/共同通信社)
大谷翔平、ブランドと契約し「チームでいちばんダサい」から脱却 ヘアカットは水原通訳と近所の理髪店
女性セブン
「中村さん」と呼んでいた水トちゃん
水卜麻美アナの結婚秘話 中村倫也が交際バレないために芸能人御用達マンションに引っ越し、呼び方は「中村さん」
女性セブン
岸谷香&五朗の長男が
岸谷五朗&香夫妻の長男が、金髪ロン毛、口ピアスのYouTuberになっていた「小室圭さんを救いたい」発言も
女性セブン
介護ポストセブンがキャンペーンを実施中
【Amazonギフト券総額10万円分プレゼント!】無料読者会員サービス「介護のなかま」大募集!
NEWSポストセブン