フランスではテレビのニュースでも日本の様子を報道していた(筆者撮影)

フランスではテレビのニュースでも日本の様子を報道していた(筆者撮影)

 ちなみに、この記事の下には、「中国のネットは、安倍の死に拍手」といった見出しの記事もあった。中国版ツイッター「ウェイボー」に、事件直後、「銃撃犯の無事を祈る」という投稿があり、1万3000回の「いいね」ボタンが押されたという。「シンゾー・アベは怒りを忘れ、銃撃犯を赦すべき」との投稿には、9万3000回の「いいね」がクリックされた形跡があるという記事を載せていた。

欧米に「街頭演説」の文化はない

 ほかにも、欧州のメディアで注目された点がある。たとえば「街頭演説」という選挙運動のスタイルだ。欧州では、大きなステージや会場内で選挙運動を行なうことが多い。一般市民が政治家の真横まで近づけるような状況は少ない。この日本独特の光景が複数の欧州メディアで指摘されていた。もうひとつは、手製の銃が使用されたという点だ。欧米諸国では、銃規制が緩く、容易に購入できることから、「なぜホームメイドのガン?」という疑問が挙がっていた。要するに、「なぜ本物のガンじゃないの?」ということだ。日本では、銃がほぼ出回っていないことが、今回の事件以前には欧州ではあまり知られていなかった。

 今回の安倍元首相襲撃事件で、欧州メディアは、「日本の銃規制は厳格であり、銃撃事件は極めて稀である」といった表現を繰り返し使用した。日本の治安が悪化しているとか、テロの危険があるなどといった報道は、今のところ目にしない。特に日本と異なる点は、「テロリズム」という用語を、欧米は使用していないことだ。

 日本に駐在する特派員は、日本政府やマスコミの情報を基に、記事を書き、それを外国に配信することが役目でもある。だが、日本のメディアが書く「テロ」という用語に、特派員は踊らされなかった。もちろん事件自体は衝撃的だが、日本が安全な国であり、「テロ国家」でないイメージを報じ、解説したのは、外国人特派員の冷静な判断だったといえるだろう。

取材・文/宮下洋一(在欧ジャーナリスト)

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