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「どんな状態の赤ちゃんが着てもかわいく見えるように」エンジェルドレス制作者の願い

元気に生まれてくる赤ちゃんと違い、抱っこするためには背中部分にパットも必要

元気に生まれてくる赤ちゃんと違い、抱っこするためには背中部分にパットも必要なため、エンジェルドレスにはそうした設計も施された(写真は製作する山本さん)

「最後に抱っこをしたい」──そう思っても、死産児は小さくて脆いため、それすらままならなかった。しかし、少しでも母親の気持ちに寄り添いたい。わが子との出会い、そして最後の別れを特別なものにするためにその女性は“天使のような産着”を作った。悲しみのなかに一筋の光を見出せるようにと願いを込めて。

 佐賀大学医学部附属病院(佐賀大病院)では、死産の赤ちゃん専用のドレス「エンジェルドレス」が用意されている。考案、開発したのは、看護師の山本智恵子さん(44才)だ。このエンジェルドレスについて、ノンフィクションライターの山川徹氏が綴る。【全4回の第2回。第1回から読む

 * * *
 熊本県熊本市東区。山本さんの工房には、3台のミシンが設置され、ハンガーラックには色とりどりの洋服が吊るされている。これらはすべて山本さんたちが手作りした障害者向けの洋服である。

 エンジェルドレス制作のきっかけとなったのは、彼女のライフワークでもある、障害者向けの洋服作りだった。

「障害があるかたへの洋服を作る上で大切にしてきたのは、機能的でありながら、デザイン性も高いということです。その経験が、エンジェルドレスの制作にも役立ちました」(山本さん)

 熊本市出身の山本さんは、訪問看護の現場を長く経験した。彼女が障害者向けの衣服を手がけはじめたのは10年ほど前。訪問先で知り合った障害児の母親がこぼした一言だった。

「かわいくて、着せやすい服が見つからないんです」

 子供の頃から洋裁が得意だった山本さんは、母親の希望を叶えたいと思い、ポケットから胃ろうチューブを出せる、チェック柄のロンパースを作った。母親の喜ぶ姿に接して以来、山本さんは、知人や訪問先からお願いされると、障害者向けの洋服を手作りしてきた。

 もっとたくさんのニーズに応えようと、2018年に障害者用の衣服制作を手がける一般社団法人「ReFREL」を立ち上げる。そして昨年、高齢者福祉施設だった建物を借り上げ、医療ケア付き重度障害者のグループホーム「ファミリン」を設立した。現在は、1階部分を8人の障害者の居住スペースとして使用し、2階部分を「ReFREL」の工房などに利用する。

「障害者支援にかかわる原動力はなんですか?」

 山本さんは、よくそんな質問をされるのだが、なかなか答えが出せないでいた。「でも」と彼女は続ける。

「最近、やっとその答えが見つかりました。それは、たぶん困っている人の声。障害者の洋服作りも、お母さんの一言からスタートしました。当事者の『助けて』という声が、私の原動力なのかなって。それはエンジェルドレスも同じです」

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