大船渡高校時代の佐々木の登板には、東京から多くの報道陣が集った。それでも、岩手大会決勝で「登板回避」となったことが、大きな話題を呼んだ(撮影/藤岡雅樹)

大船渡高校時代の佐々木の登板には、東京から多くの報道陣が集った。それでも、岩手大会決勝で「登板回避」となったことが、大きな話題を呼んだ。高校野球が「エースと心中」ではなくなるきっかけのひとつとなる“事件”だった(撮影/藤岡雅樹)

 そして、鳴門は今夏、第102回大会以来となる甲子園出場(14回目)を果たした。徳島大会で登板した投手は――またしてもエースだけ。今春、11本塁打を放って優勝した大阪桐蔭と初戦で対戦し、8回を投げて3失点と好投したプロ注目左腕の冨田は、徳島大会4試合で28回を投げぬき、わずか4失点。堂々の甲子園帰還であるが、またしても全49代表校の中で、ひとりの投手で甲子園にたどり着いたのは鳴門だけという状況なのだ。

 徳島大会は出場校が29校と少なく、第1シードである鳴門は4回勝てば甲子園だった。しかも、今年の徳島大会は日程に余裕を持って開催され、2回戦と準々決勝の間には中6日が設けられていた。連戦となるのは準決勝と決勝だけだった。さらに、鳴門は2回戦と準決勝を5回コールドという、いわゆる“省エネ”で勝ち上がっていった。決して冨田を酷使したとは言えまい。

 ただ、このように余裕のある勝ち上がりだったからこそ、冨田しか起用しなかった森脇監督の采配意図が知りたかった。投手の継投が勝敗を大きく左右する時代に突入したことに対し、春夏通算12回の甲子園出場を誇る森脇監督の見解を訊ねるべく再会を楽しみにしていた。だが、残念ながら森脇監督が1回戦の采配を執らないことは決定している。

 鳴門には冨田がいる。そして近江には、コロナ禍に見舞われた京都国際に代わって繰り上がりで出場した今春の選抜で、初戦から決勝・大阪桐蔭戦で途中降板するまでマウンドを守り抜いた山田陽翔がいる。1回戦屈指の好カードは両投手の投げ合いで始まるはずだ。両エースが最後までマウンドに立ち続けるかどうかも見どころとなろう。

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