長嶋茂雄に代わるスターそれがオスカルだった
かくして1974年8月29日に初演を迎え、周囲の思惑に反して大成功を収める。反対派までもがファンとなり、社会現象を巻き起こしたのだ。
「毎日、段ボールに入ったファンレターが何箱も届きました。ファンレターにはすべて返事を出していたのですが、“ハンカチにサインして”などのリクエストに応えていたら、すべての人に返事を出すのに、4年半もかかりました。母と2人でコツコツ続けていましたから梱包も大変で(笑い)。でもこれほどの反響は、なかなか経験できるものではありませんから、ありがたかったですね」
この成功を、読売巨人軍のスター長嶋茂雄さんの引退と絡めて報じた新聞もあった。
「長嶋さんが引退されたのも1974年。長嶋さんの引退でスターは消えたけれど、代わりに彗星のごとくオスカルが現れたという内容の記事だったと記憶しています」
『ベルサイユのばら』はその後、再演を繰り返し、宝塚史上最大のヒット作となる。
「私はアンドレ役も演じさせていただき、その後は、長谷川さんの教えを後輩に伝えるため、演技指導にも努めました。
この作品には、愛と葛藤、美しさ、凜々しさ、儚さなど、宝塚に欠かせない要素が詰まっているんです」
これからも多くの人に愛されることを願っていると、榛名さんは笑顔で答えてくれた。
【プロフィール】
榛名由梨さん/元「宝塚歌劇団」月組・花組トップスター。『ベルサイユのばら』の初代オスカル、アンドレ役のほか、『風と共に去りぬ』のレット・バトラー役などでも評価され、専科にも所属した後、1988年に退団。引退後は演技指導にも尽力。現在は講演会やコンサートなどで活躍。
取材・文/上村久留美 取材協力/前川亜紀
※女性セブン2022年8月18・25日号