「話題にならないよりはずっとマシ」
不思議なことに、手厳しい批判をしつつも、反省会タグをつけて投稿する人々は、連日ドラマを視聴し続けている。決して「もう見ない」とはならないのだ。前出の山口さんが分析する。
「関心があるからこそ批判するのです。もし無関心なら、そもそも投稿しません。批判のお祭り状態がすすむ上、自分の意見に『いいね』がつくことで、承認欲求が満たされる。より多くの人に『いいね』を押してもらえるように、より強い批判を投稿する人もいるでしょう。つまり、ドラマへの興味はまったく失せていない、と言えます」
SNSで感想や意見を容易に共有しやすい時代だからこそ、必要以上に“辛口批評”が増えてしまったことさえ考えられるのだ。テレビ批評家でライターの吉田潮さんも、「話題にならなかった作品よりも、ずっとマシです」と断言する。
制作するNHKや出演者にとってはつらい状況かもしれないが、視聴率を見ると、6月末から7月初旬にかけて14%台だったのが、“反省会タグ”がどんどん増えた8月前半は週の平均視聴率が16%台にまで回復している。
視聴率が持ち直したのは、和彦の母・重子を演じる鈴木保奈美(56才)が登場してからだ。お嬢様育ちの重子は暢子を「家の格が違う」と一刀両断する。さらに、結婚の許しを請う息子に対し、中原中也の詩を朗読するなど独特の存在感を示した。重子の存在感は、鈴木だから醸し出せたものだと芸能関係者は言う。
「視聴者世代にとって、『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)で新時代の女性のイメージをつくり上げた彼女はやはり憧れの存在。一目置きたくなるんです。2021年に石橋貴明さんと離婚したことも“夫に依存せず、自分の人生を歩む女性”という新しいイメージをつくりました。保奈美さんの存在感は朝ドラ視聴者にとって、グッと来るものがありますよ」
暢子の大叔母にあたり、修業していたレストランのオーナー役の原田美枝子(63才)の存在感も目を引いた。それだけに、今後の展開に期待をかける意見もある。これまで順調に料理人としての修業を積んできた暢子だが、運だけでは乗り切れそうにない問題に直面しているのだ。
「夫の和彦(宮沢氷魚)が無職なのに、暢子の妊娠が判明。暢子は出産と沖縄料理店のオープンを両立させようとしています。妊娠や出産は予期しないことも多く、明るさと運だけで乗り切ってきた暢子にとって、まさに正念場です。ヒロインが成長する様子がようやく描かれ、やっと朝ドラらしくなるのかもしれません」(吉田さん)
ドラマは残り約1か月、物語の行く末を見守りたい。
※女性セブン2022年9月8日号