トライアウトからの大復活を遂げた日本ハム・古川侑利(時事通信フォト)
古川を復活させた新庄ビッグボス
「古川が象徴的な例ですが、巨人時代は1回の失敗が許されなかった。いくら能力が高くても、打たれることはありますよ。少しでも打たれたら二軍落ちと思えば、大胆な投球はしにくくなり、安全策に走ってしまう。それを『逃げの投球』と見なされると酷ですよね。
今年の古川は開幕2戦目のソフトバンク戦で中継ぎとして初登板し、2回1失点です。数字上は、2年前の巨人時代のシーズン初登板と同じです。しかし、二軍落ちはしなかった。4月2日のオリックス戦ではリリーフで5失点しています。巨人なら間違いなくファーム行きだったでしょう。それでも、新庄監督は一軍に残した。すると、次の登板から9試合連続無失点ですよ。自責点ゼロは13試合連続で続きました。一度失敗しても、挽回のチャンスを与えれば立ち直る。潜在能力を信じた新庄監督の采配で、古川は復活しました」
以前、低迷期の横浜の選手が他球団に移籍して立て続けに活躍し、優勝を味わったことで『横浜を出る喜び』という言葉が話題になった。巨人を追われ、新しいチームで花開いた選手からすれば、プレッシャーから解放される意味で『巨人を出る喜び』があるのかもしれない。
「田口と交換トレードで巨人に来た廣岡大志は坂本勇人のバックアップ要因として期待されたが、その役割を果たせていない。坂本の代わりに出た試合でエラーをしてしまう場面を見ると、巨人特有の重圧を感じます。それを乗り越えなければ一流選手にはなれないでしょうが、彼ももっと落ち着いた環境でプレーできれば、もう少し活躍できるのではないか。沢村賞投手である中日の大野雄大を得意とするなど、潜在能力は高いですからね。
もちろん、巨人のトレードで成功した例もたくさんあります。楽天から巨人に来た高梨雄平、ウィーラーは活躍していますし、宇佐見とのトレードで日本ハムから来た鍵谷陽平は中継ぎとして2連覇に大貢献した。ただ、原監督を始めとする首脳陣が選手の性格を見極めた上で、1回の失敗で二軍に落とすのではなく、最低2回はチャンスを与えるという方針にしていたら、古川のような素材も開花させられたのではないか」
8月28日の広島戦に敗れ、5位に転落した読売ジャイアンツ。試合中、ベンチで苦虫を噛み潰すような表情の増えている原監督は『元巨人』選手の活躍をどんな気持ちで眺めているのだろうか。