ライフ

土や池に生息するレジオネラ菌 豪雨災害の修復作業でも感染の危険性

レジオネラ菌感染症の危険性とは(イラスト/斉藤ヨーコ)

レジオネラ菌感染症の危険性とは(イラスト/斉藤ヨーコ)

 人間は様々な感染症とともに生きていかなければならない。だからこそ、ウイルスや菌についてもっと知っておきたい──。白鴎大学教授の岡田晴恵氏による週刊ポスト連載『感染るんです』より、水害において感染の恐れがあるにレジオネラ菌感染症ついてお届けする。

 * * *
 豪雨災害の心配な時期です。実はこの10年で私の大学のキャンパスが線状降水帯と台風で2回、浸水しました。地球温暖化でしょうか。つらく大変な経験でした。

 ただでさえ水害の被害で過酷な状況で、その修復作業で感染症の健康被害を受けるようなことは、何としても避けたいものです。

 水害では、よくレジオネラ菌感染症の危険性が指摘されますが、まさにそれを豪雨災害の被災者となって理解しました。

 レジオネラ菌は、普段は土の中や池の水に生息している細菌です。人の体温より少し高い温水を好み、他の細菌、アメーバなどの作るバイオフィルム(生物膜)に寄生しています。ときどき清掃が行き届いていない浴場施設などでレジオネラ菌感染症が問題になるのは、タンクやパイプでこの菌が繁殖することがあるからです。

 一方、洪水などでは土中にいるレジオネラ菌が水流でさらわれ、レジオネラ菌入りのエアロゾルが被災地にばらまかれるという事態になります。泥の濁流にのまれたら、菌の入ったミストや水が気管に入り、肺炎などを起こす危険性があるのはもちろんですが、さらに後片付けの作業でも感染の危険性に晒されます。

 水害では浸水した高さまでびっしりと細かな泥が壁面に貼り付いています。そうした汚れは高圧洗浄で洗い流すのですが、そのとき発生する粉塵混じりのエアロゾルはレジオネラ菌が含まれ、吸入によって感染の危険性があります。また、農作業での腐葉土の取り扱いでも感染が報告されるのと同様に、土砂まみれの清掃作業も感染のリスクがあるでしょう。適切なマスクをきっちりと着用して、感染を予防する必要があります。

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン