スポーツ

玉鷲が照ノ富士から今年4個目の「金星」 協会は出費が年96万円増で苦しい懐事情に拍車

秋場所5日目に照ノ富士を下した玉鷲は今年だけで4つ目の金星(時事通信フォト)

秋場所5日目に照ノ富士を下した玉鷲は今年だけで4つ目の金星(時事通信フォト)

 9月15日の大相撲秋場所5日目、結びの一番では東前頭3枚目の玉鷲が横綱・照ノ富士を相手に寄り切りで勝利した。幕内最年長となる37歳9か月の玉鷲だが、今年に入ってからは照ノ富士から4個目の「金星」の獲得となる。今場所も序盤戦にして上位陣に勝ちっ放しのいない「番付崩壊」の様相だが、そうした状況は協会の“懐事情”にも大きく影響しそうだ。

 秋場所も上位陣に安定感のない相撲が続く。横綱の照ノ富士は2日目にも東前頭筆頭の翔猿に敗れている。先場所は10勝を挙げてカド番を脱出した大関の正代も、2日目から4連敗となり黒星が先行。カド番大関の御嶽海も3日目と4日目に連敗するなど苦戦を強いられている。

 今場所は関脇と小結にそれぞれ張り出しを設けて1999年初場所以来、13年ぶりとなる「3関脇3小結」となった。それでも幕内上位の力のバランスは改善されていない。NHKの相撲中継では横綱と大関に勝てば三役以上の力士でもインタビュールームに呼ばれるが、今場所も初日から大関・貴景勝を破った小結・逸ノ城が呼ばれるなど大忙しである。相撲担当記者はこう言う。

「相撲協会が3関脇3小結の番付にした背景には、西前頭2枚目で優勝した逸ノ城を三役に上げないといけないといった事情もあるが、それに加えて横綱が平幕に負ける『金星』を少しでも避けたいという考えもあったはず。平幕が横綱に勝って『金星』をあげると持ち給金(十両以上の関取に対して、月給以外に本場所で支払われる報奨金)が大きく増える。巡業が再開したとはいえ、コロナの影響で収益が大きく落ち込んでいる相撲協会としては、出費を少しでも抑えたいという本音もあるでしょう」

 持ち給金は、番付によって決まる基準給(十両40円、幕内60円、大関100円、横綱150円)に、過去の成績に応じた額が積み上げられていく加算制となっている。

 1勝の勝ち越しにつき50銭が加算される仕組みで、8勝7敗なら50銭、10勝5敗なら2円50銭が増額される。実際にはその持ち給金を「4000倍」した金額が翌場所から支払わることになり、8勝なら2000円、10勝すれば翌場所から1万円が月給とは別に毎場所、引退まで増額された支給が続く。

「金星を1個あげると持ち給金が10円上がる。1場所につき4万円が翌場所から支払われ続け、年間(6場所)24万円の増額がその力士の引退まで続くことになる。幕内優勝でも持ち給金は30円(全勝は50円)の加算なので、金星の価値がいかに高く設定されているかわかる」(前出・相撲担当記者)

 ひとり横綱の照ノ富士だが、今年になってから先場所まで金星を7個も配給している。玉鷲には1月場所から3場所連続で金星を与え、さらに今場所で今年4つ目の配給となった。つまり、玉鷲にとっては引退するまで年間96万円(24万円×4)のプラスが生じるわけだ。

「3関脇3小結」の番付のもとでは、三役が2人増えるために横綱が金星を与える確率は下がったはずだが、それでも照ノ富士は5日目までに金星を2つ配給するなど、“大盤振る舞い”が続いている。

 まさに“照ノ富士キラー”とも呼ぶべき活躍を見せる玉鷲は、先場所は所属する片男波部屋から新型コロナ感染者が出たことで13日目から休場したが、東前頭3枚目で迎えた今場所は5日目まで勝ちっぱなしの土俵が続く。千秋楽まで土俵を勤め、大きく勝ち越して三役に復帰してもらうしか、協会を悩ませる「大量の金星」にブレーキがかかることはなさそうだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

連続強盗の指示役とみられる今村磨人(左)、藤田聖也(右)両容疑者。移送前、フィリピン・マニラ首都圏のビクタン収容所[フィリピン法務省提供](AFP=時事)
《ルフィ事件》「腕を切り落とせ」恐怖の制裁証言も…「藤田は今村のビジネスを全部奪おうとしていた」「小島は組織のナンバー2だった」指示役らの裁判での“攻防戦”
NEWSポストセブン
モンゴルを公式訪問された天皇皇后両陛下(2025年7月12日、撮影/横田紋子)
《麗しのロイヤルブルー》雅子さま、ファッションで示した現地への“敬意” 専門家が絶賛「ロイヤルファミリーとしての矜持を感じた」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
三原じゅん子氏に浮上した暴力団関係者との交遊疑惑(写真/共同通信社)
《党内からも退陣要求噴出》窮地の石破首相が恐れる閣僚スキャンダル 三原じゅん子・こども政策担当相に暴力団関係者との“交遊疑惑”発覚
週刊ポスト
ツアーに本格復帰しているものの…(左から小林夢果、川崎春花、阿部未悠/時事通信フォト)
《トリプルボギー不倫》川崎春花、小林夢果、阿部未悠のプロ3人にゴルフの成績で “明暗” 「禊を済ませた川崎が苦戦しているのに…」の声も
週刊ポスト
兄・輝星と仕草も容貌も瓜二つの吉田大輝
金足農業・吉田大輝「甲子園で優勝して、兄・輝星を超えたい」決意 顔も仕草も瓜二つだが、「まるで違う」と父が明かす2人の性格
週刊ポスト
山本アナは2016年にTBSに入局。現在は『報道特集』のメインキャスターを務める(TBSホームページより)
【「報道特集」での発言を直撃取材】TBS山本恵里伽アナが見せた“異変” 記者の間では「神対応の人」と話題
NEWSポストセブン
解散を発表したTOKIO(HPより)
「城島さん、松岡さんと協力関係は続けていきたいと思います」福島県庁「TOKIO課」担当者が明かした“現状”と届いたエール
NEWSポストセブン
映画『国宝』で梨園の妻を演じた寺島しのぶ(52)
《無言の再投稿》寺島しのぶ、SNSで2回シェアした「画像」に込められた歌舞伎役者である息子・尾上眞秀への“覚悟”
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《ベビー服は男の子のものでは?》眞子さん、夫・小室圭さんと貫く“極秘育児”  母・佳代さんの「ラブコール」も届かず…帰国が実現しない可能性も
NEWSポストセブン
吉沢亮演じる喜久雄と横浜流星演じる俊介が剣幕な表情で向かい合うシーンも…(インスタグラムより)
“憑依型俳優”吉沢亮主演の映画『国宝』が大ヒット、噂される新たな「オファー」とは《乗り越えた泥酔事件》
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“半日で1000人以上と関係を持った”美女インフルエンサー(26)がイギリスの公共放送で番組出演「口をすぼめて、吸う」過激ビジュアル
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 三原じゅん子「暴力団ゴルフコンペ」写真ほか
「週刊ポスト」本日発売! 三原じゅん子「暴力団ゴルフコンペ」写真ほか
NEWSポストセブン