がんリスクを招きやすい行動
飲酒の習慣がまったくない人と比較して、週5日以上飲酒する人は1.37倍、1日に日本酒を1合以上飲む人は1.74倍、閉経前の乳がん罹患リスクが高くなる。
「そもそも日本人の約半数はアルコールに弱い体質で、飲酒したときに体内で代謝されて産生される発がん物質の『アセトアルデヒド』が体内に残りやすい。一滴も飲むなとは言いませんが、適量を心がけてほしい。
また、よく『お酒の種類でリスクは変わりますか』『赤ワインは健康にいいといわれます』などと聞かれますが、種類に関係なくアルコールはがんのリスクを増加させることがわかっており、がん予防のためには飲まないことが最善です。一方で、少量の飲酒であれば循環器病のリスクが低下することも知られていることから、全体としては、飲むとしても過剰ではなく適量飲酒に抑えることが健康を保つ秘訣です」
“適量”として推奨されるのは、男性では1日あたりのアルコール量は約23g。日本酒なら1合、ビールなら大瓶1本、ワインならボトル3分の1が目安になる。
「しかし残念ながら女性では、女性ホルモンの影響のほか、男性と比較して体格が小さく、その分肝臓におけるアルコール代謝量が相対的に少なくなることから、適量は男性の半量とされています」
たばこやアルコールの節制とともに取り組みたいのは、食生活の改善だ。
「ただし、食品による予防効果は感染・喫煙・飲酒への対策と比較すれば多くはない。まずはこの3つに優先的に取り組むことが肝要です。食事については、よくテレビなどで『きのこに発がん抑制作用が』と紹介されるとこぞってスーパーに買いに走り、品薄になるケースがあります。がん予防に興味を持っていただくのはとてもありがたいのですが、食品による予防効果は長期間の摂取習慣によるものであって、特定の食品を急に短期間摂取することによる予防効果は期待できません」
井上さんが“意味のある食事改善”として推奨するのは「減塩」と「野菜・果物など食物繊維の摂取」だ。
「食塩や塩蔵食品の過剰摂取は、ほぼ確実に胃がんのリスクを上げることが明らかになっています。食品表示の塩分量をチェックする、ラーメンやうどんの汁を飲み干さないなど身近なことから気をつけてください。
一方で、食物繊維は大腸がんのリスクを下げる可能性が示唆されています。大腸がんは男女とも罹患率が増加しており、女性の死亡数はトップです。野菜や果物、海藻類など食物繊維が豊富な食材を摂取して、予防に努めてほしい」