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インフルエンザ大流行の懸念 豪では5~6月に医療逼迫、日本でも10月以降に流行予測

そろそろインフルエンザが心配となる季節に(イラスト/斉藤ヨーコ)

そろそろインフルエンザが心配となる季節に(イラスト/斉藤ヨーコ)

 人間は様々な感染症とともに生きていかなければならない。だからこそ、ウイルスや菌についてもっと知っておきたい──。白鴎大学教授の岡田晴恵氏による週刊ポスト連載『感染るんです』より、今冬に懸念されるインフルエンザの大流行についてお届けする。

 * * *
 私が今、不安でならないのはこの秋からのインフルエンザの大流行です。コロナの流行が始まった2020年2月から世界中でインフルエンザ感染者数は急速に減っていました。日本でも2020~2021年と2021~2022年の2シーズンは、インフルエンザウイルスがほとんど検出されていません。この2年間は流行がなかったということです。

 これまでのインフルエンザの流行期には、症状のない人も鼻や喉の分泌液を採取して培養するとウイルスが増えていきます。つまり、流行期には発症していない多くの人も実は毎年のように感染していて、インフルエンザに対する免疫のトレーニングを繰り返し受けていたということです。この2年間流行がなかったことで、私たちのインフルエンザ免疫は低下しているのです。中でも5歳未満くらいの子どもたちは、生まれてからインフルエンザに一度も感染したことがなく、免疫記憶が全くないということが多くなっています。免疫記憶のない人がウイルスに曝されれば感染しやすく、重症化しやすい傾向があります。

 今年の5、6月に南半球のオーストラリアでは、インフルエンザが大流行して医療が逼迫しました。その半年後にあたるこの10月以降、入国緩和される日本でも、同様の流行が起こると予測されます。今年は特に小児を中心に流行するでしょう。コロナの医療逼迫の中で、インフルエンザがやってくるのです。

 高齢者や妊婦、子どもはハイリスクで、気管支炎や肺炎、特に幼児では「インフルエンザ脳症」などの重篤な合併症を起こしやすく、救急外来を受診することも多いのです。呼吸が速く、息が苦しい、または胸部が痛いなどの場合は、肺炎の注意が必要です。反応がおかしい、けいれんを起こす、ぼうっとしている、異常な言動・行動を取るなどした場合は、インフルエンザ脳症の可能性があります。すぐに医療機関を受診する必要があります。また、あらかじめインフルエンザワクチンの接種で重症化や合併症のリスクを低減させておくことが大切です。

 オーストラリアのデータでは流行ウイルスの8割がA香港型ウイルスでした。これから日本で接種されるワクチンにはこのA香港型も含まれますので、今年はインフルエンザワクチン接種がより強く勧められます。65歳以上の人は定期接種でできますが、12歳以下は2回、13歳以上は1回接種で任意接種となります。特に小さい子はマスクもできない年齢ですし、インフルエンザ脳症のような重大な合併症が心配ですから、早めの接種が必要です。

 政府にはコロナ対策に加え、子どもたちへのインフルエンザワクチン接種と治療薬、医療の確保を望みます。読者の皆様も今年はインフルエンザワクチンの予約を、ご自身とお子さん、お孫さんの分をお早めにお願いします。

【プロフィール】
岡田晴恵(おかだ・はるえ)/共立薬科大学大学院を修了後、順天堂大学にて医学博士を取得。国立感染症研究所などを経て、現在は白鴎大学教授。専門は感染免疫学、公衆衛生学。

※週刊ポスト2022年10月21日号

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