ライフ

11年ぶり全線復旧の只見線「何度でも乗りたい、訪れたい」と思われる観光路線づくりの輪

四季折々、期間限定で運行されるトロッコ列車「びゅうコースター風っこ」

四季折々、期間限定で運行されるトロッコ列車「びゅうコースター風っこ」(写真提供/福島県只見線管理事務所)

 2011年7月に福島県と新潟県を襲った集中豪雨被害で27.6kmが不通となっていたJR只見線が、10月1日に全線開通した。もともと超赤字区間で、復旧費は最終的にJR、地元自治体、国で3分の1ずつを負担、復旧後には福島県が鉄道施設と土地を保有し、JR東日本がその施設を借りて運行・メンテナンスを受け持つ「上下分離方式による鉄道復旧」となった。

「全線がつながって嬉しいと思う以上に、復旧を選択した私たち地元には、只見線を活かして盛り上げていく責任があるとひしひしと感じています」

 只見線地域コーディネーターとして活動している酒井治子さん(41)は喜びの中にも、表情を引き締める。

 上下分離方式での復旧が決まった2017年度、福島県や沿線自治体などで構成するプロジェクトチームが策定した「只見線利活用計画」には、「日本一の地方創生路線」を目指すことが掲げられた。

 景観整備など様々な事業も盛り込まれ、全線再開通に向けて自治体と地元の住民・企業が一丸となって只見線を応援する活動を展開してきた。ご当地名物を模したヒーロー姿で休日の駅に“おもてなし出動”する住民も登場。何度でも乗りたい、訪れたいと思われる観光路線づくりの輪は広がっていった。

 只見町出身の酒井さんは、不通区間の復旧工事が始まった直後の2018年7月、福島県から同コーディネーターを委嘱された。

 只見町観光まちづくり協会に11年勤務した経験も生かし、県只見線管理事務所が運営する「只見線ポータルサイト」での情報発信やPRイベント企画の調整、プロジェクト推進のための住民と県・市町村・JRとのつなぎ役など、只見線に関するあらゆる活動に奔走してきた。利活用計画の一環で実施している車内販売で扱う沿線特産品の掘り起こしにも注力する。

 県と会津17市町村は、復旧費約90億円の3分の1強に加え、上下分離方式によって年間約3億円と見込まれる鉄道施設の維持管理費を今後負担していく。不通だった区間の被災前の平均通過人員(輸送密度)は1日1kmあたり49人(2010年度)。利用者増には企画列車で誘客するなど、観光路線化の推進が不可欠だ。

「全線再開通はゴールではなく、只見線を起爆剤に地方を創生する挑戦への新たな出発です」(酒井さん)

※週刊ポスト2022年10月21日号

関連記事

トピックス

かりゆしウェアをお召しになる愛子さま(2025年7月、栃木県・那須郡。撮影/JMPA) 
《那須ご静養で再び》愛子さま、ブルーのかりゆしワンピースで見せた透明感 沖縄でお召しになった時との共通点 
NEWSポストセブン
松嶋菜々子と反町隆史
《“夫婦仲がいい”と周囲にのろける》松嶋菜々子と反町隆史、化粧品が売れに売れてCM再共演「円満の秘訣は距離感」 結婚24年で起きた変化
NEWSポストセブン
参院選の東京選挙区で初当選した新人のさや氏、夫の音楽家・塩入俊哉氏(時事通信フォト、YouTubeより)
《実は既婚者》参政党・さや氏、“スカートのサンタ服”で22歳年上の音楽家と開催したコンサートに男性ファン「あれは公開イチャイチャだったのか…」【本名・塩入清香と発表】
NEWSポストセブン
注目度が上昇中のTBS・山形純菜アナ(インスタグラムより)
《注目度急上昇中》“ミス実践グランプリ”TBS山形純菜アナ、過度なリアクションや“顔芸”はなし、それでも局内外で抜群の評価受ける理由 和田アキ子も“やまがっちゃん”と信頼
NEWSポストセブン
中居、国分の騒動によりテレビ業界も変わりつつある
《独自》「ハラスメント行為を見たことがありますか」大物タレントAの行為をキー局が水面下でアンケート調査…収録現場で「それは違うだろ」と怒声 若手スタッフは「行きたくない」【国分太一騒動の余波】
NEWSポストセブン
かりゆしウェアのリンクコーデをされる天皇ご一家(2025年7月、栃木県・那須郡。撮影/JMPA) 
《売れ筋ランキングで1位&2位に》天皇ご一家、那須ご静養でかりゆしウェアのリンクコーデ 雅子さまはテッポウユリ柄の9900円シャツで上品な装いに 
NEWSポストセブン
定年後はどうする?(写真は番組ホームページより)
「マスメディアの“本音”が集約されているよね」フィフィ氏、玉川徹氏の「SNSのショート動画を見て投票している」発言に“違和感”【参院選を終えて】
NEWSポストセブン
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
皇室に関する悪質なショート動画が拡散 悠仁さまについての陰謀論、佳子さまのAI生成動画…相次ぐデマ投稿 宮内庁は新たな広報室長を起用し、毅然とした対応へ
女性セブン
スカウトは学校教員の“業務”に(時事通信フォト)
《“勧誘”は“業務”》高校野球の最新潮流「スカウト担当教員」という仕事 授業を受け持ちつつ“逸材”を求めて全国を奔走
週刊ポスト
「新証言」から浮かび上がったのは、山下容疑者の”壮絶な殺意”だった
【壮絶な目撃証言】「ナイフでトドメを…」「血だらけの女の子の隣でタバコを吸った」山下市郎容疑者が見せた”執拗な殺意“《浜松市・ガールズバー店員刺殺》
NEWSポストセブン
連続強盗の指示役とみられる今村磨人(左)、藤田聖也(右)両容疑者。移送前、フィリピン・マニラ首都圏のビクタン収容所[フィリピン法務省提供](AFP=時事)
【体にホチキスを刺し、金のありかを吐かせる…】ルフィ事件・小島智信被告の裁判で明かされた「カネを持ち逃げした構成員」への恐怖の拷問
NEWSポストセブン
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン