狂犬病のワクチンを開発したルイ・パスツールは1822年生まれ
ただし、暴露前ワクチンを接種していても、もしも動物に咬まれたりした場合には、前号でも解説したようにすぐに流水と石けんで傷口を開いて洗い流し、消毒し、ただちに地元の医療機関を受診することには変わりません。
日本では狂犬病がなくなったためにその恐ろしさが認知されていませんが、現在も世界では1年間に約5万人が狂犬病で死亡しており、海外ではむやみに動物に手を出さないなど、とにかく「狂犬病は予防が全て」と思って対応すべきなのです。
さて、パスツールのワクチンによって救われたジョセフ少年は、大人になってパリのパスツール研究所の門衛になりました。1940年、第二次世界大戦でドイツ軍はパリを占領。研究所にもドイツ兵が押し寄せます。ナチス軍はパスツールの墓所を開けるように命じ、門衛であったジョセフはそれを拒絶して命を絶ったと伝えられます。助けられた命をかけて守ろうとしたのです。悲しいお話です。
【プロフィール】
岡田晴恵(おかだ・はるえ)/共立薬科大学大学院を修了後、順天堂大学にて医学博士を取得。国立感染症研究所などを経て、現在は白鴎大学教授。専門は感染免疫学、公衆衛生学。
※週刊ポスト2022年11月4日号