取材をうける小川さん

母親は熱心な信者だった

旧統一教会を脱会したきっかけは

鈴木:改めて、小川さんの半生を振り返ってもらえますか。

小川:うちは両親が合同結婚式で結婚し、私を含めて6人のきょうだいがいました。毎朝教祖さまの写真に「よろしくお願いします」とお祈りして、毎週日曜は家族で教会に行く。そこでは「神の子である祝福2世は生まれながらに罪がない」と言われました。両親はすごく優しくてかわいがってもらいましたが、つらかったのはお金がないこと。親からお小遣いをもらったことは一度もなく、服はほとんどがおさがりで、学校ではいじめられました。それでも親の期待に応えたいという思いが強く、教会のイベントや修練会にも積極的に参加していました。きょうだいと比べても、私は熱心な優等生だったんです。

鈴木:脱会するきっかけはあったのですか。

小川:18歳で教会本部がある韓国の清平のお祓い修練会に参加した時、精神科病院で朝昼晩と除霊をさせられて精神が崩壊しました。自分が6歳ぐらいの人格になって地べたを這い回るようになり、救急車で運ばれたんです。

 考えてみたら私は6歳くらいで服装が周りと違うことで最初のいじめを受けて、先生にも親にも言えず泣かずに我慢する子でした。その頃の人格がズルズルと自分の中に残っていて表に出てきた。

鈴木:胸が詰まる話です。そうした精神崩壊は小さい頃に虐待や性的被害を受けた人がなりやすいと聞きます。人格を解離させないと精神を保てないということですね。

小川:清平の修練会では私の他にも精神が崩壊して急におかしくなる人がいました。すると周囲の信者は「あの人、霊的になっている」「悪霊がうつった」と言い、「除霊すれば治る」とする。病気だという解釈がないんです。

鈴木:清平の病院やそれ以外の施設でも2世が自ら命を絶つことがあるそうです。多くの信者が精神崩壊を起こす教団って、やっぱりおかしいですよ。

小川:帰国後はうつで家にこもるようになりました。20歳の時に両親と決別し、連帯保証人の要らないアパートに移り住んだ。それから現在の夫と知り合い、今に至ります。

 安倍さんの銃撃事件が起き、2世問題を伝えようとやむにやまれぬ気持ちでSNSを始めたら、家庭の貧困や家族との関係を切実に発信する、自分以上に悲惨な元信者とたくさん繋がったんです。誰かが変えないといけないと思って発信するようになりました。

鈴木:長年、見過ごされてきた問題で、顔を出してきっちりと自分の経験を語る意味は非常に大きいですよ。

後編に続く

※週刊ポスト2022年11月11日号

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