国内

鈴木エイト氏×元2世信者・小川さゆりさん対談「旧統一教会の解散がゴールではない」

会見以降流れが変わったという

会見以降流れが変わったという

 旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の元2世信者として、日本外国特派員協会で会見した小川さゆりさん(仮名)。その小川さんと、教団を追及し続けてきたジャーナリスト・鈴木エイト氏の対談が実現した。2人が「2世信者の苦しみ」と問題解決への道を語り合った。【前後編の後編。前編から読む

 * * *
小川:声をあげる上で色々なことを勉強しましたが、問題の本質は子供の人権侵害が平然と行なわれていて、それを助長する団体に国が宗教法人格を与えていることです。

鈴木:統一教会では、合同結婚式で両親が教団の選んだ相手と結婚して原罪をなくし「神の子」と呼ばれる祝福2世が生まれます。その2世が親や教団に反抗しようにも、「教団がなければ私は生まれてこなかった」とアイデンティティを否定される。そうして2世は大きな葛藤を抱え、何らかのかたちで自分自身を納得させて、教団の教えに従う面があると思います。

小川:教会があるから私の命もあるという葛藤は本当に大きかった。大きなコンプレックスで、自分の生きている意味は何だろうと感じていました。

鈴木:2世が生まれたきっかけにまで遡り、行動を制限するのは非常に卑怯なやり方だと思います。

小川:私は真面目に教義を勉強したからこそ、自分で考えて間違いに気づくことができたと思う。教会の中では教えに疑問を持つこと自体が「サタン的」だから、(教祖の)文鮮明が明言してないことも「きっとこうだよね」と教会の都合の良いように考えるようになる。礼拝で「この教えは矛盾してませんか」と純粋に質問する信者がいると、「あの人はサタン的だね」と批判されていました。

鈴木:自分の頭で考えないことはすごく楽で、それに慣れると教団の教えに染まってしまう。小川さんは自力で人生を取り戻したのだと思います。

小川:私は20歳で脱会しましたが、ゼロからではなく完全にマイナスからのスタートでした。20年間、「教会以外の社会はサタンの社会だ」と植え付けられ、社会復帰のハードルがすごく高かった。

鈴木:統一教会に限らず、2世信者は対人関係を築くことが苦手な人が多い。中途半端が許せず、相手の言い分を聞き入れられず人を断罪したり、一般社会によくある“なあなあの関係”が難しい。2世同士のコミュニティでも人間関係がうまくいかないケースが多くある。

小川:信者だった頃は外の人は堕落していると教えられ、教会から出ていく人は将来天国に行けないと思っていました。実際に両親を含む教会の人は私が教会を離れた瞬間に、「サタン側に行った人」と全否定した。今も礼拝で私のことを「あの人は嘘つきだから話を聞いてはいけない」と話しているみたいです。

 私は教会から出た時、本当に世間知らずだったし、社会性もまったくなかった。そんな私に一から向き合ってくれた夫には感謝しかありません。

鈴木:最近よく統一教会の会見に出てくる勅使河原秀行氏(教会改革推進本部長)は、「被害者」ではなく「被害を訴えている方」と言いますよね。教団が被害を与えてきた、教団は加害者であるという意識がまったくない。

 ただし、2世を脱会させることが正しいのかは、一概には言えない。生まれた時から信仰を持たされた2世は脱会しても戻る場所がありません。小川さんのように支えになる人と出会えたのは幸運ですが、頼れる存在もなく経済的に自立できない2世も少なくない。単に脱会させるのではなく、今の状況を乗り切るための支援が必要です。そうしたことを理解するために、支援する側を教育することも求められます。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平の投手復帰が待ち望まれている状況だが…
大谷翔平「二刀流復活でもドジャースV逸」の悲劇を防ぐカギは“7月末トレード” 最悪のシナリオは「中途半端な形で二刀流本格復活」
週刊ポスト
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
“進次郎劇場”で自民党への逆風は止まったか
《進次郎劇場で支持率反転》自民党内に高まる「衆参ダブル選挙をやれば勝てる」の声 自民党の参院選情勢調査では与党で61議席、過半数を12議席上回る予測
週刊ポスト
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
「生肉からの混入はあり得ないとの回答を得た」“ウジ虫混入ラーメン”騒動、来来亭が調査結果を公表…虫の特定には至らず
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
衆院広島5区の支部長に選出された今井健仁氏にトラブル(ホームページより)
【スクープ】自民広島5区新候補、東大卒弁護士が「イカサマM&A事件」で8000万円賠償を命じられていた
週刊ポスト
9月に成年式を控える悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
悠仁さまが学園祭にご参加、裏方として“不思議な飲み物”を販売 女性グループからの撮影リクエストにピースサイン、宮内庁関係者は“会いに行ける皇族化”を懸念 
女性セブン
V9伝説を振り返った長嶋茂雄さんのロングインタビューを再録
【長嶋茂雄さんロングインタビュー特別再録】永久不滅のV9伝説「あの頃は試合をしていても負ける気がしなかった。やっていた本人が言うんだから間違いないよ」
週刊ポスト
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談【第24回】現在70歳。自分は、人に何かを与えられる存在だったのか…これから私にできることはありますか?
週刊ポスト