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【フォトレポート】ロシアとの進まぬ領土交渉の象徴 廃墟と化した日本最東端「オーロラタワー」の盛衰

誰も訪れる人がいないオーロラター。

オーロラタワーに観光客の姿はなく、かつての賑わいは想像できない(撮影/山本皓一)

 ロシアの実効支配下にある北方領土。そこから最も近い場所である北海道・根室市の納沙布岬には、対岸の北方領土を眺めるための望遠鏡が設置された施設がいくつかある。なかでもひときわ目を引くのは1987年竣工の巨大な白塔「オーロラタワー」(望郷の塔)だ。日本船舶振興会(現・日本財団)の会長を務めた笹川良一氏が、北方領土返還運動の一環として建設した高さ96メートルの塔の展望台は、国後島や歯舞群島を一望できる根室観光の目玉だった(開業時の名称は「笹川記念平和の塔」)。「日本の国境」を30年以上にわたって撮影している報道写真家・山本皓一氏が、今年6月に現地を訪れた時の様子を写真とともにレポートする。

 * * *

 これまで何度もオーロラタワーを訪れ、展望台から歯舞諸島や国後島を撮影してきたが、今回は人の気配はなく、入り口には「休館」を知らせる貼り紙が掲示されていた。呆然とタワーの前に立ち尽くしていたところ、近くを通りがかった地元の住民が「ずっとクローズが続いてますよ」と教えてくれた。新型コロナの感染拡大が始まる直前の2020年元日の営業を最後にタワーは休館しており、再開のメドはたっていないという。

 タワー入り口の天井の一部は崩落し、横のレストランに至っては建物自体が崩れ、廃墟同然になっていた。広い駐車場に車は1台もなく、舗装されたアスファルトの継ぎ目から伸びた雑草は、そのまま放置されている。

 まるで、手詰まり状態の北方領土問題を象徴するかのような光景である。

 一般の日本人がノーチェックで行ける範囲でいえば、納沙布岬は「日本領土の最東端」。つまり、日本で最も早く“初日の出”を拝める場所だ。

「御来光見物の客が来る元日だけ営業して、春になったら営業を再開するパターンだった。でも、2020年にコロナが始まってからはもうダメさ。エレベーターも長いこと動かしてないから危ないでしょ。それにしても、この先どうするんだろうね……」(前出の住民)

 開業初年度は約30万人の来訪者があったというが、リピーターが見込めるような施設ではなく、近年の入場者数は年間数千人にとどまっていたという。

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