こうして佐八郎は東京の北里の伝染病研究所に入り、ペスト菌の防疫に従事、日本でのペスト流行を封じ込めます。さらにその実績をもって、ドイツに留学。エールリヒ(後のノーベル賞受賞者)と共に、梅毒の治療薬サルバルサンの研究を開始しました。
無駄なく緻密に練られた詳細な実験計画を組めたのは彼の天才的能力です。その上で動物実験を徹底的に繰り返し、無限に近い労力で想像を絶する実験量をこなす彼にドイツ人同僚も畏敬の念を抱いたそうです。ペニシリンができるまでに数億の命を救ったサルバルサンは、世を救う薬という意味です。
私が大尊敬する先生です。
【プロフィール】
岡田晴恵(おかだ・はるえ)/共立薬科大学大学院を修了後、順天堂大学にて医学博士を取得。国立感染症研究所などを経て、現在は白鴎大学教授。専門は感染免疫学、公衆衛生学。
※週刊ポスト2022年11月11日号
山の神とも呼ばれた