龍山警察署での捜査を終え、証拠資料を運ぶ捜査員(EPA=時事)
龍山警察署では署員が、事前に予想以上の人波による密集事故を懸念する報告書を提出したにもかかわらず、情報課長や係長がそれを黙殺。事故後に報告内容を削除するよう指示したことが判明した。上司らには、発生した事故や犯罪事件に対する捜査ばかりを仕事と捉え、情報を集めて事故を事前に防止するという意識が低かったのだ。発生するかどうかわからない潜在的な問題へ対応は評価されづらく、無駄であり、面倒だと思ったのだろうか。
事前に対応しなかったのは、この上司らだけではなかった。惨事が発生する数時間前から、危険を知らせる通報が相次いでいたが、警察側はそれに対応しなかったことがわかっている。経営学者のマイケル・A・ロベルトは著書『なぜ危機に気づけなかったのか 組織を救うリーダーの問題発見力』飯田恒夫訳(英治出版)の中で、精神分析医セオドア・ルービンのこんな言葉を引用している。
〈問題はそこに問題があることではない。問題は、問題がないと思っていることであり、問題を抱えていることが問題だと考えていることである〉
事故発時には、消防当局が警察側に再三、交通規制や人員増員を要請したというが、本格的に機動隊が配置され始めたのは1時間以上も後だ。防止する、防止に動くという雰囲気や文化が組織なく、その意識が署内に育っていなかったのか。
なぜここまで不祥事が重なったのか、特別捜査本部の発表を待つしかない。