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韓国・梨泰院での雑踏事故 「事故を懸念する事前報告書」も無視した警察幹部たちの呆れた危機意識

2022年10月29日、韓国の首都ソウルの梨泰院でハロウィンの混雑の中で群衆雪崩が発生(AFP=時事)

2022年10月29日、韓国の首都ソウルの梨泰院でハロウィンの混雑の中で群衆雪崩が発生(AFP=時事)

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、ハロウィンを前に韓国の梨泰院で起きた雑踏事故について。

 * * *
 韓国ソウルの繁華街・梨泰院(イテウォン)の雑踏事故をめぐり、11月8日、特別捜査本部が韓国警察トップの執務室などを一斉捜索していると報じられた。ソウル各地では追悼集会が行われ、中心部では数万人規模の市民が抗議活動を行ったという。次々に明るみに出る警察の不手際に唖然とするが、これは不手際というより、もはや事故を防げなかった警察による人災でないかと思えてくる。

 現場を管轄する龍山(ヨンサン)警察署の李林宰(イ・イムジェ)前署長は、業務上過失致死傷などの疑いで立件された。事故直後に現場に到着したと状況報告書に記載されていたが、虚偽報告の疑いがある。普通に考えれば、容疑者の虚偽を暴き見破るのが警察の仕事だし、監視カメラの映像が証拠として出てくることなどわかるだろうが、警察のメンツや自己保身に走ったのだろう。

 実際に到着したのは事故発生から1時間近くが経った後で、現場近くの監視カメラに、手を後ろに組んでゆっくり歩く李署長の姿が映っていたのだ。誰がどう見ても、その歩き方からは切迫感も危機感も感じ取れない。大事故が起きたという認識がないのだ。さらに後ろ手という仕草には地位や権力を誇示したいという心理が含まれていると言われる。

 そもそも到着が遅れたのは、歩ける距離にある飲食店にいたのに、車で移動することにこだわったためらしい。渋滞だったためぐるりと迂回することになり、時間がかかったのだ。李前署長にとっては、仕事への義務や責任感より自己顕示欲を満たすことの方が重要だったのだ。

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