2020年に調教師試験に合格した名手・蛯名正義氏
エリザベス女王杯はかつて3歳(旧4歳)牝馬限定で、古馬牝馬のGIというのはありませんでした。それが牝馬路線も充実させようということで、1996年に3歳牝馬限定の秋華賞ができてこのレースが古馬に開放、そして2006年から春の古馬牝馬GIとしてヴィクトリアマイルが創設されたのです。
さらに春と秋に一つずつ、やはりそれぞれのジャンルで古馬牝馬同士のGIを確立していってくれると、いい目標になります。たとえば春にダートGI、秋にマイル以下の短いところというのがあれば、選択肢が広がります。そのうえで、より自信があれば牡馬とのレースに行けばいいと思うのです。
牝馬が2勝も3勝もするっていうのは大変なことなんです。ここに出て来られるような牝馬は、引退後繁殖にあがっていい子を産むという大事な仕事があります。このレースを連覇しているアドマイヤグルーヴはドゥラメンテを産んだし、フサイチパンドラはアーモンドアイの母です。アパパネは秋華賞馬アカイトリノムスメを産みましたし、やはり僕が騎乗して勝ったマリアライトの子オーソクレースも菊花賞で2着。
今年の出走馬にも、偉大な母や祖母を持つお嬢様がいます。
【プロフィール】
蛯名正義(えびな・まさよし)/1987年の騎手デビューから34年間でJRA重賞はGI26勝を含む129勝、通算2541勝。エルコンドルパサーとナカヤマフェスタでフランス凱旋門賞2着など海外でも活躍、2010年にはアパパネで牝馬三冠も達成した。2021年2月で騎手を引退、2022年3月に52歳の新人調教師として再スタートした。
※週刊ポスト2022年11月18・25日号