面会室にも入ったPaix2(ぺぺ)の2人
今年3月、約51年の歴史を持つ黒羽刑務所は閉庁した。法務省の委嘱で矯正支援官も務めるふたりのナビゲートによって、特別に“潜入取材”が実現したのである。
面会室が併設された管理棟を抜けて、いよいよ塀のなかへ。すべての受刑者の移送が終わっているため、とにかく静かだ――と感じたのは、何も知らない記者とカメラマンだけだった。
「誰もいないからじゃなくて、過剰収容の時期でも刑務所のなかは静かなんです。規則で私語は禁じられていますし、無駄な生活音もありませんから」(めぐみさん)
通常、ペペのコンサートが行われるのは塀のなかの講堂だ。全国どの刑務所や少年院に現場入りしても、誰もいないかのように所内は静かなのだという。
「舞台には緞帳が下りているので、座席は見えません。皆さんがいるんだと分かるのは、くりこみ(刑務官に先導され、受刑者たちが行進して入場、座席に着く)の足音が聞こえてからです」(真奈美さん)
管理棟を背に、長い通路がまっすぐに伸びている。天井には各種の電線やケーブルが集約されていた。手入れの行き届いた中庭を挟んで、左右に舎房が建つ。ベランダがなく、窓に鉄格子がはめられている点を除けば、学校の校舎のようにしか見えない。敷地が広いため、刑務官たちはときに自転車を使って移動している。