派手な遊びをしていた菊地氏(Instagramより)
菊地氏が頼っていたのは「金融占星術」
いずれにせよ、「資金を戻したい」と願う投資家にとって、最後の望みとなっていたのは、代表社員でありカリスマトレーダーと言われる「かけるん」こと菊地翔(かける)氏の手腕だ。エクシアによれば、菊地氏は1977年生まれで最終学歴は東京モード学園。独学でトレード技術を磨き、2009年には、わずか2週間のうちにFXトレードで、2500%もの利益率をたたき出したという。エクシアの驚異的な利回りは、彼の手腕によるものだった。
だが、肝心のトレードの腕前に疑問を投げかける人物がいる。エクシアの創業メンバーで、元副社長の伊藤大輔氏だ。伊藤氏は菊地氏の7才年下で、もともとは地元の愛知県で貿易会社を経営、個人投資家としても活動していた。エクシアは伊藤氏と菊地氏で立ち上げた会社だった。ビジネスパートナーだった伊藤氏が明かす。
「私は菊地氏と2015年のエクシア設立の1年くらい前に知り合いました。当時、私の知り合いが、FXトレーダーを探していて、FacebookにFXで好成績を出していると書いていた菊地氏を見つけた私が、彼にトレーダーとして声をかけました。
FXの世界には、顧客の口座を使ってプロトレーダーが運用するというものがあります。ミラートレードや、コピートレードとも言われるもので、主に海外の証券会社で行われていますが、そのトレーダーを菊地氏にお願いしました。
ところが、菊地氏はトレードが上手くいかず、いきなり損を出してしまったんです。彼は、『相場が悪かった』とか『システムが合わなかった』と言っていました」
菊地氏はトレーダーとして失敗した後、伊藤氏にエクシアの立ち上げを提案したという。当時はまだ菊地氏を信頼していた伊藤氏は、彼の熱意に押される形で出資者探しに奔走し、一定の金額が集まった段階で、エクシアがスタートした。しかし、スタートから間もなくして、伊藤氏は会社を追放されてしまう。
クロムハーツの眼鏡をかける菊地氏(Instagramより)
「合同会社の社員権販売という耳慣れないスキームが画期的だと感じましたし、菊地氏のトレーダーとしての手腕にも期待するところがありました。実際にエクシアが動き始めると、菊地氏は“運用はうまくいっている”と話していました。
ただ、菊地氏は言っていることがコロコロ変わるんです。例えば営業した社員に対しての報酬や、投資家への払い戻し金額が頻繁に変わったりする。会社の契約書もどんどん彼の都合のいいように変えてしまう。私が最も気になったのが、投資家への払い戻し金額の変更です。初期のエクシアにお金を出していたのは私の知人ばかりだったので、私は彼らに約束した配当を出さなければと責任を感じていました。菊地氏が一方的に変更した金額では、彼らに“約束を反故にされた”と騒がれてしまうかもしれない。だから、私が菊地氏の反対を押し切って投資家に配当を支払っていたのです。
その行為に対して、菊地氏が“横領だ”と言い出し、私はエクシアから排除されました」
その後、伊藤氏はエクシアを外部から見守る立場となったが、昨今のトラブルに対しては責任を感じる部分もあるという。
「私が菊地氏とエクシアを立ち上げなければ、このような事態にもならなかった。何より、菊地氏の手腕を見抜けなかったことに責任を感じています。
エクシア立ち上げ当初から、菊地氏は私や当時の同僚たちに運用方法や運用益を開示していません。運用の実態は代表社員である彼しか知らなかった。それは今も変わっていないと聞きます。
ただ、私が見ていた限り、菊地氏がトレードで彼が公言するほどの莫大な利益を出していたとは到底思えない。彼が振りかざすトレード理論は、“金融占星術やカジノトレード理論を組み合わせて高いリターンを出せる”とのことですが、それが事実なら、目の前で運用して見せてほしかった。
エクシアが始まってすぐ彼は“これくらいの金額が集まったら、利益が全く出せていなくてもこれくらいの期間は会社がもつ”と言っていました。これは鮮明に覚えています。それぐらい衝撃的な言葉でした。さらに彼は、なかなか社員権が売れないと、“これじゃ、おれの王国が作れない”とまで言っていた。今思えば、運用益ではなく、集めた出資金で配当を払う考えがあったのかもしれません」